今週の指標 No.972 目次   前へ   次へ 2010年11月8日

CI先行指数における長短金利差の動向について

<ポイント>

  1. 景気動向指数は、景気の現状把握および将来予測のために、様々な経済活動に関する重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって作成された指標である。先月発表された景気動向指数(8月改訂値)を見ると、景気に対して先行するCI先行指数(以下、先行指数)は99.5と前月差−0.5ポイント低下し、2ヶ月連続の低下となった。内訳を見ると、新設住宅着工床面積の寄与はプラスであったが、中小企業売上げ見通しD.I.の前月差が−8.9ポイントと急落したことに加え、日経商品指数や長短金利差などの金融指標もマイナスに寄与した。

  2. ここでは、先行指数の構成要素のうち長短金利差に注目したい。上述の景気動向指数の目的から考えると、先行指数の構成要素は景気に対し、先行的かつ敏感に反応する指標であることが望ましい。しかし、長短金利差の先行指数に対する寄与度は低下してきており(図1)、その感応度が低下している。他の構成要素の標準偏差と比較しても、2000年代に入ってからの長短金利差の景気に対する感応度が低下していることが分かる(表1)。

  3. 長短金利差の感応度が低下した要因として、1.バブル崩壊後の調整の長期化に伴い期待物価上昇率が低下したことに加え、2.1990年代後半からの強力な金融緩和政策によりタームプレミアムが低下したこと(時間軸効果)が挙げられる。なお、各年代の長短金利差の最大値と最小値を見ると、2000年代に長短金利差の変動幅は急速に縮小している(図2)。

  4. では、感応度が低下してきた長短金利差は依然として、景気に対して予測力を維持しているのだろうか。この点を検証するために、景気が後退期にあるかどうかを長短金利差で説明する分析を行った(後退期を1、それ以外を0とするプロビットモデルを推計)。結果を見ると、長短金利差の係数は有意であり、かつ符号条件を満足していることから、長短金利差は予測力を維持していることが分かる。そこで、推計値から景気後退確率を求めてみると(図3)、80年代初頭、80年代後半及び90年代の景気後退期において、長短金利差から推計される景気後退確率は7割を超えており、高い予測力を持っている。しかし、90年代後半以降の景気後退期及びそれ以降の景気後退期を見ると、景気後退確率は5割以下となっており、長短金利差の予測力は90年代後半から急速に失われていることが分かる。ただし、サンプルを1995年12月で前半と後半に分けて推計したところ、後半期間も長短金利差の有意性は維持されていた。

  5. このように長短金利差の景気予測力は低下していると考えられるが、今後、期待物価上昇率や、金融政策の動向しだいで再び予測力が増してくる可能性があり、引き続きその動向を注視する必要がある。


図1.長短金利差の寄与度の推移
表1.CI先行指数各系列の寄与度の標準偏差
図2.長短金利差の推移とその変動幅
図3.長短金利差による景気後退確率の推計

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 長谷川 昌士 直通:03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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