今週の指標 No.971 目次   前へ   次へ 2010年11月1日

カナダ:緩やかな回復を続けるも、先行き不透明感が強まり、減速が懸念される

<ポイント>

  1. カナダでは、インフラ投資や減税等が盛り込まれた約620 億加ドル(GDP比約4%)の景気刺激策が奏功していることや、金融システムの健全性が維持されたことなどから、世界経済・金融危機の影響が比較的軽微にとどまり、09年夏頃から順調な回復を続けてきた。10年6月には、金融政策正常化の観点から、危機以来G7の中では初めての利上げに踏み切り、7月、9月にも利上げを実施した(図1)。しかしながら、足元では純輸出のマイナス幅拡大による下押しに加えて個人消費や住宅投資が伸び悩んだことから、2010年4〜6月期の実質GDP成長率は前期比年率2.0%と前期の5.8%から伸びが鈍化している(図2)。

  2. カナダの個人消費や住宅投資は、08年末から09年初めにかけて落ち込んだものの、金融システムがダメージを受けなかったことや、景気刺激策による住宅建設の促進などから、09年中頃から住宅市場が回復し始め、住宅価格が再度上昇に転じた(図3)。さらに、株価や雇用の回復を受けて家計のバランスシート改善が進み(図4)、耐久財やサービスを中心に個人消費も増加に転じた。このため、こうした個人消費や住宅投資の増加が政府支出による下支えと併せて危機後の景気回復を牽引してきた。しかしながら、10年4〜6月期以降、ギリシャ危機の発生を受けて消費者マインドが低下し(図5)、住宅着工が減少するとともに小売売上が弱い動きを示すなど、家計部門の回復の鈍化を示唆する指標が現れている。さらに、株価等の資産価格が下落する一方で、住宅や消費者ローン等の債務が引き続き増加したことから、家計純資産が5四半期ぶりに減少に転じるなど、消費者が支出を控える可能性が高まっている。

  3. カナダ経済の先行きを示す景気先行指標総合指数(注)は、10年3月以降前月比上昇幅は縮小に転じ、9月には09年4月以来約1年半ぶりに低下しており、特に住宅及び小売耐久財(家電・家具)といった家計関連項目が総合指数を下押ししている(図6)。こうした先行き懸念の高まりを受けて、カナダ銀行(BOC)は10月、経済見通しを改定し、10年は3.0%、11年は2.3%と前回7月時点(10年:3.5%、11年:2.9%)から下方修正するとともに、10月19日の政策決定会合で政策金利であるオーバーナイト金利を1.0%に据え置いた。BOCは、声明において「世界経済の回復は新たな局面に入りつつある」とし、アメリカをはじめとする先進国や新興国の成長鈍化が見込まれることや、為替市場及びグローバル・インバランスに関連するリスクが世界経済の回復を遅らせる可能性があることを指摘した。また、国内の個人消費に関する見方を前回会合(9月)より弱めるとともに、住宅投資についても懸念を示し、今後の追加利上げには慎重な姿勢をみせた。

  4. カナダ経済は、世界経済の回復に伴って今後も緩やかな回復を続けるとみられるものの、先行き不透明感が増すにつれて景気下振れリスクも高まりつつある。最大のリスク要因としては、輸出の約8割を占めるなど、経済的結びつきの強いアメリカにおける回復ペース鈍化の影響が挙げられる。また、冒頭で述べた景気刺激策が当初の計画通り11年3月末の終了に向けて徐々に縮小されることから、政策効果がはく落していく影響も注視する必要がある。

    (注)住宅や雇用、個人消費、株価、製造業新規受注等、景気循環の先行きを示す10指標により構成される。なお、指標にはアメリカ消費者信頼感の将来指数も含まれており、アメリカ経済との密接な関係性を反映している。

図1 政策金利
図2 実質GDP成長率
図3 住宅着工・価格
図4 家計のバランスシート
図5 消費者信頼感
図6 景気先行指標総合指数

担当:参事官(海外担当)付 熊谷 優子 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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