今週の指標 No.968 目次   前へ   次へ 2010年9月27日

需要段階別の企業物価の動向について

<ポイント>

  1. 国内企業物価は、原油など資源価格の高騰による2008年の上昇と、その後の資源価格の下落や世界的な金融危機、景気後退を背景とする下落を経て、このところ横ばいとなっている(図1)。本稿では、国内企業物価を需要段階別に見ることで、企業間取引における価格形成の現状を調べてみよう。
  2. 国内企業物価を需要段階別に見ると、素原材料、中間財が概ね同じ動きをしている一方で、最終財は傾向的に下落している(図2)。また、素原材料と中間財は似たような動きをしているが、中間財価格は素原材料価格に比べて変動が緩やかで、また遅行している。国内企業物価に占めるウエイト(注)は、素原材料:中間財:最終財1:20:15であるが、足下では素原材料、中間財の上昇と最終財の下落がほぼ相殺される形で、国内企業物価全体として横ばい圏内の動きに入っていることが分かる。
    (注)2005年基準。2000年基準では素原材料:中間財:最終財1:22:18。
  3. このように需要段階別の価格変化の違いが生じる理由の一つとして、業種間の投入構造の違いが挙げられる(図3)。企業物価は企業間で取引される財の価格を集計しているため、対象はほとんどが製造業であるが、製造業は非製造業と比較すると投入に占める財の割合が高いため、投入財の価格変動の影響を受けやすい。中でも、素原材料や中間財製品が多い素材業種では素材業種からの投入が多く、国際商品市況など原料コストの変動の影響を受けやすいと考えられる。一方、最終財製品が多い加工業種では加工業種からの投入が多く、かつ、品質や機能による差異化の程度が高い製品が多いため、原料コスト変動の影響を受けにくいと考えられる。
  4. したがって企業間取引の川上に近いほど、価格形成において市況の影響を強く受けることが予測される。この点について、簡単な推計式を用いて確認してみよう(図4)。被説明変数を素原材料、中間財、最終財の国内品の物価上昇率、説明変数を日経国際商品指数の前年比上昇率(市況要因)、需給判断DI(需給要因)、時間当たり賃金の前年比上昇率(賃金要因)として回帰分析すると、素原材料の価格は市況要因が決定要因となっており、一次産品価格の変動の影響を受けやすいことが確認できる。中間財の価格は需給要因が決定要因となっている。原材料価格から価格転嫁されるという意味では一次産品価格の変動の影響を受けているはずだが、実際に価格転嫁できるかどうかは製品の需給動向に影響される。結果として原材料価格より変動が遅行し、動きも緩やかになると考えられる。最終財では、需給要因と賃金要因が価格決定要因となっている。最終財価格は、一次産品価格の変動の影響をあまり受けず、需給要因や賃金要因から下落傾向が続いていると推測できる。企業物価の先行きを占うには、国際商品市況に加え、製品の需給環境や賃金の動向を注視する必要がある。

図1 国内企業物価の推移
図2 需要段階別の国内企業物価の推移
図3 投入構造の業種間比較
図4 需要段階別の国内企業物価の推計

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 小林 あゆみ 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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