今週の指標 No.965 目次   前へ   次へ 2010年8月30日

アメリカ:住宅金融の動向

<ポイント>

  1. アメリカでは、8月17日に住宅金融改革に関する政府主催の官民合同コンファレンスが開催され、経営再建中の政府支援機関(GSE)である連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の改革に向けた議論が本格化している。2006年後半以降の住宅バブルの崩壊を契機に両社の経営は悪化し、今年の4−6月期決算では、ファニーメイは12億ドル、フレディマックは47億ドルの最終赤字を計上した(図1)。これを受けて、両社は財務省に対して33億ドルの追加支援を要請しており、政府が両社に注入した公的資金は累計で1,500億ドルに達する見込みである(図2)。

  2. GSEの経営悪化の背景には、住宅市場の停滞が大きく影響している。住宅差押え件数は高水準を維持し、住宅ローン延滞率も上昇傾向にあることから、しばらく不良債権の増加圧力が働くと見込まれる(図3、図4)。一方、住宅価格は歴史的な低水準にあり、またこうしたレベルが当面続くと予想されることから、担保資産の劣化を通じて今後も一定程度の損失が発生する可能性が高い(図5)。住宅ローン供給に関しては、住宅市場の不透明感の高まりを背景に民間金融機関による貸出が縮小している中で、現在、MBSの新規発行のほぼ全てがGSEによって賄われており、GSEが果たす役割は大きい(図6)。GSEの経営悪化は、住宅金融市場全体のローン供給機能を低下させ、住宅市場の更なる停滞を招くおそれがある。

  3. また、国際金融システム及び連邦財政に及ぼす影響についても留意する必要がある。GSEが保証・発行する債券(エージェンシー債)の保有状況をみると、国内金融機関とともに海外の保有比率が高く、中国、日本をはじめとするアジア地域の保有が多い(図7、表8)。このため、理論的には、GSEの経営問題の影響は国内だけでなく各国にも波及するおそれがあるが、08年9月にはGSE債務に対する政府保証が与えられ、09年12月には公的資金注入の上限が撤廃されたことから、現在はこうしたリスクが直ちに顕在化する可能性は低い。しかし、連邦政府の財政状況は近年悪化しており、これにGSE保証の債務を加えると債務残高はGDP比112.4%に達する(図9)。GSEの動向も含めてアメリカ財政の持続性に対する懸念が高まる場合には、世界的な金融不安が再燃するおそれがある。

  4. 政府は、2011年1月までに住宅金融改革に関する包括的な提案を議会に提出するとしているが、11月の中間選挙を意識して、GSEの存廃やそのあり方をめぐる民主・共和両党の論争は激しさを増しており、改革の先行きは不透明である。今後の議論の行方が注目される。

図1 GSEの純利益 図2 GSEに対する公的資金注入
図3 住宅差押件数の推移 図4 住宅ローン延滞率の推移
図5 住宅価格の推移
図6 MBS新規発行額の推移 図7 エージェンシー債の保有構成
表8 エージェンシー債の海外保有状況 図9 連邦政府の債務負担

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 小池 訓文 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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