今週の指標 No.963 目次   前へ   次へ 2010年8月23日

鉱工業生産の持ち直し

<ポイント>

  1. 鉱工業生産は、リーマン・ショック後に急激に落ち込んだ後、非常に早いペースで持ち直してきた。ここでは、改めてその持ち直しの過程を点検してみることとしたい。
  2. 今回の景気拡張局面における生産の持ち直しを過去と比較してみると、次の2つのことを確認することができる。第1に、ここまでの生産の持ち直しの増勢は過去の景気拡張期と比べて非常に強い(図1)。第2に、過去の景気拡張局面初期の生産の持ち直しの中心は資本財や生産財だったが、今回は資本財の生産が低い水準で推移していた中で、耐久消費財がいち早い持ち直しを見せている(図2)。こうした耐久消費財を中心とした強い持ち直しの背景としては、それに先立つ景気後退が、特にリーマンショック以降は非常に急速かつ深いものであったためにその反動で持ち直しのテンポも早くなったこと、各国で実施された自動車の買い換え支援策等の景気刺激策の寄与があると考えられる。
  3. 次に、足下の状況を見てみると、2010年の4〜6月期の生産は前期比で1.5%とこれまでと比べて増勢が鈍化している(図3)。また、鉱工業の在庫循環も第1象限にかかり始めており、とりわけこれまでの生産の増加を牽引してきた耐久消費財は全体に先んじる形で45度線に近づきつつある(図4)。他方で、資本財は全体に遅れながらも在庫調整が進み生産も持ち直してきており、2010年4〜6月期の生産の増加の約半分は資本財によるものとなっている(図3)。
  4. 以上を踏まえると、今後生産が緩やかながらも増加を続けるためには、耐久消費財や生産財の大きな落ち込みが生じないこと、資本財が持続的に増加していくことが重要である。海外だけでなく国内での設備投資が持ち直しに転じるかどうかを見極めるとともに、円高やアメリカ、中国の景気減速懸念というリスク要因、エコカー補助金等の政策効果の剥落の影響等を注視する必要がある。

図1 景気拡張局面における生産の平均増加率(単月・前月比)
図2 景気の谷前後6か月の財別の生産の動き
図3 財別の鉱工業生産指数の動き(前期比増加率寄与度)
図4 在庫循環図(四半期)

(備考)
1. 経済産業省「鉱工業指数」より作成。季節調整値。
2. 図1の値は景気拡張期の単月の平均増加率。今回の景気回復局面については、
暫定の景気の谷である2009年3月から最新の公表値である6月確報までの値を
用いて算出しているため、景気の山までの値を使って算出した過去の局面との
 比較に際しては注意が必要である。

担当:参事官(経済財政分析ー総括担当)付 大山 健一郎 直通:03-3581-0806

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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