今週の指標 No.961 目次   前へ   次へ 2010年8月2日

マネーストックの動向

<ポイント>

  1. マネーストックは、一般法人(非金融法人)、個人および地方公共団体等が保有する、現金通貨や預金通貨などの通貨量を集計したものである。マネーストックの主要指標であるM2およびM3(注1)のいずれの動きをみても、2009年後半から伸び率が低下を続けていたが、足下伸び率が拡大している(図1)。
  2. マネーストックは、日本銀行から金融部門を含めた経済全体に供給される通貨(マネタリーベース)が、金融部門の貸出を通じて拡大(信用創造)された通貨量を集計していると考えることが出来る。
  3. そこで、足もとのマネーストックの増加の要因を分析するため、まずマネタリーベースの動きをみると、新型オペ(注2)の増額などを背景に足下伸びが拡大していることがわかる(図1)。しかし、銀行貸出の伸びをみると、こちらは前年比で−2%程度のマイナスが続いており(図2)、マネーストックが足下で高い伸び率を示していることと整合的ではない。つまり、信用創造によってマネーストックが増加に転じたということではなさそうだと推論できる。
  4. そこでマネーストックに戻り、M3の伸びを要因別に見てみよう(図3)。すると、4月及び5月に預金通貨(個人)の伸び率の拡大が著しく、これが足下のマネーストックの高い伸びの背景になっていることが分かる。個人預金通貨の残高の季節調整値(注3)を見ても、4月は前月に比べて約1.5兆円増と高い伸びとなっている(図4)。
  5. この個人預金通貨の急増の要因として、本年4月の大手生命保険会社の株式会社化の影響が考えられる。その際、契約者に対して株式や現金の交付が行われており、その総額は約1.4兆円と推計されている。そのうち現金で交付された金額は約1兆円と言われており、現金が個人の預金口座に振り込まれたと考えられる。この現金は、金融部門の信用創造を通じたものではないことから、上記の推論と整合的である。

    (注1) M2:現金通貨+国内銀行等に預けられた預金。
         M3:現金通貨+全預金取扱機関に預けられた預金。
    (注2) 期間3ヶ月の固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション。
    (注3) 内閣府にて季節調整を実施。

【図1】マネーストックとマネタリーベース
【図2】銀行貸出の推移
【図3】M3伸び率と寄与度
【図4】預金通貨(個人)の動向

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 熊谷 敏一 直通:03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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