今週の指標 No.960 目次   前へ   次へ 2010年7月26日

インド:景気拡大の中、高まる物価上昇圧力

<ポイント>

  1. インド経済は、世界金融・経済危機後の景気の急減速から回復し、2010年1〜3月期に、実質GDP成長率は前年同期比8.6%となり、力強い成長がみられる(図1)。先行きについても、引き続き高い成長が見込まれており、2010年度(2010年4月〜2011年3月)の見通しをみると、インド財務省は、8.25〜8.75%(10年2月)、インド準備銀行(中央銀行)は、8.0%(10年4月)としており、国際機関でも8〜9%の成長を予測している(表2)。

  2. 堅調な内需がこうした景気回復を支えている。乗用車や二輪車といった耐久消費財の販売動向をみると、09年半ば以降、二けた台の高い伸びを続けている(図3)。また、内需の回復を背景に、耐久消費財を中心に生産の伸びが大きく高まっている(図4)。09 年末以降は、資本財の生産も伸びが高まっており、設備投資等の需要も回復してきたことがうかがわれる。

  3. こうした内需を中心とした景気拡大の中で、物価上昇圧力が高まっている。卸売物価上昇率(インド政府・金融当局が最も重視する物価指標)の動向をみると、09年秋以降、大きく伸びが高まっており、2010年6月時点で、前年比10.55%となっている(図5)。卸売物価上昇率の内訳をみると、物価上昇の要因には変化がみられる。当初は、天候不順による09年秋の農作物の収穫減を主因とした食品価格の上昇が物価全体の押上げ要因となっていたが、このところ、食品価格は高水準ながらも上昇に歯止めがかかりつつある。一方、工業製品の価格が大きく上昇しており、需要面からの物価上昇圧力が強まっているものとみられる。また、燃料・エネルギー価格にも上昇がみられ、6月25日に、燃料価格の原則自由化の方針、燃料価格の引上げが発表されたことから、今後も更なる上昇が見込まれる。なお、インド準備銀行は、燃料価格の引上げが卸売物価上昇率に与える影響について、直接的には約1%押上げ、さらに二次的な影響が今後数か月にわたって現われると見込んでいる。

  4. インド準備銀行は、2010年に入り、景気回復が堅固になりつつあること、インフレ懸念が高まっていること等を背景に、危機対応として採られた緩和的な金融政策からの転換を図っており、年初来、3回の政策金利の引上げと預金準備率の引上げを実施している(図6)。しかしながら、今のところ物価上昇圧力が緩和する動きはみられず、卸売物価上昇率は、インド準備銀行が当面の目標とする4.0〜4.5%を大きく上回っている。インドの金融政策運営は、世界経済の先行きに懸念もみられる中で景気回復を維持しつつ、インフレ圧力を抑制していくことが求められており、難しい舵取りが迫られている。

図1 実質GDP成長率 表2 国際機関による見通し
図3 乗用車・二輪車販売台数(前年比) 図4 鉱工業生産 図5 卸売物価上昇率 図6 政策金利

(備考)
インド中央統計局、商工省、インド準備銀行、インド自動車工業会、CEICデータより作成。

担当:参事官(海外担当)付 高瀬 由希子 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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