今週の指標 No.955 目次   前へ   次へ 2010年4月19日

南アフリカ:低迷が続く個人消費

<ポイント>

  1. 2010年6月にサッカーのワールド・カップの開催を控えている南アフリカは、金や数多くのレアメタルの産出国としても注目が集まっている。また、1990年代半ば以降、個人消費の拡大をベースに安定的に経済が成長してきた。特に、2000年〜07年にかけて実質GDP成長率が年平均5%程度となり、BRICsに続く成長地域と称されるVISTA(ヴェトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)にも名を連ねるなど、今後の一層の成長に期待が高まっていた。

  2. その後、世界金融危機の影響等から実質GDP成長率は08年10〜12月期以降マイナス成長が続いていたが、09年7〜9月期に4四半期ぶりにプラス成長に転換し、09年10〜12月期は前期比年率+3.2%に改善した(図1)。しかし、内訳をみると、在庫投資が同+4.2%とプラスに大きく寄与する一方、GDPの6割強を占める個人消費は6四半期ぶりにプラス成長に転換したものの、同+0.9%の寄与にとどまるなど、力強さに欠ける状況となっている。

  3. 個人消費が低迷を続ける要因として、雇用・所得環境の悪化と高水準の物価上昇率が挙げられる。雇用者数は09年9月にかけて大幅に減少した後、09年10〜12月期には下げ止まったものの、低水準の伸びとなっている(表2)。また、失業率は、02年の30.4%から08年10〜12月期には21.9%まで低下した後再び上昇し、09年10〜12月期の失業率は24.3%となっている。厳しい雇用環境を背景に所得の伸びも大幅に縮小しており、名目雇用者報酬は二桁の伸びが続いていた状況から、09年には7%台へと伸び幅が低下している(図3)。一方、物価をみると消費者物価指数は08年7〜9月期に前年同期比12.4%とピークを付けた後上昇幅は縮小傾向にあるものの、依然として南アフリカ準備銀行のインフレ目標値(3〜6%)の上限近傍の高い水準で推移している(図4)。このため、実質雇用者報酬でみると、03〜07年にかけては、前年同期比で6%以上の伸びとなっていたが、直近では1〜2%に伸び幅が大幅に低下しており、消費の増加を抑制している(図3)。

  4. また、金融機関による家計への貸出余地が縮小している可能性がある。可処分所得に対する家計の負債の割合をみると、02年を底に08年にかけて急上昇し、その後も長期的な傾向線を大きく上回る高い水準で推移している(図5)。このため、金融機関は家計等民間部門に対する貸出を慎重に行うようになり、結果として消費の下押し圧力が増した可能性がある。

  5. 南アフリカ準備銀行は消費者物価上昇率がインフレ目標値内で落ち着くとの見通しを背景に、10年3月25日に政策金利を7%から6.5%に引き下げた。声明では「家計における消費支出の改善は緩やかなペースで続くと見込まれる」としている。消費者マインド指数によると、消費者物価上昇率の縮小等を背景に、今後12か月の景況感見通しは改善方向にあることに加え、消費者に対する金融環境も改善することが見込まれるなど、センチメントの回復が続いている点はプラスである。しかし、実質雇用者報酬の伸びが依然として低水準にあり、負債額は可処分所得に対して高水準が続いていることから、民間消費が持続的な拡大トレンドに回帰するかどうか注視する必要がある(図6)。


図1 実質GDP成長率:個人消費は回復に遅れ
図2 産業部門別雇用者数変化:雇用者数は下げ止まってきたが、低水準
図3 雇用者報酬の推移:実質雇用者報酬の伸び率は低下後やや持ち直し
図4 消費者物価指数:上昇幅は縮小しているが、依然として高水準
図5 家計部門の負債の可処分所得比:高水準で推移
図6 消費者マインド:最悪期を脱して改善

担当:参事官(海外担当)付 鷹野 洋 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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