今週の指標 No.953 目次   前へ   次へ 2010年3月29日

中国:全人代を開催〜金融政策スタンスの考察〜

<ポイント>

  1. 3月5日、第11期第3回全国人民代表大会(全人代)が開催された。温家宝総理による政府活動報告では、2009年を回顧し、「新世紀を迎えて以来、経済発展が最も困難であったが、世界に先駆けて経済の回復・好転を実現した」としている。しかし、2010年の主要任務では、「今なお一部の際立った矛盾や問題が存在している。」とし、その例として、生産能力過剰、雇用不足、財政・金融分野の潜在的リスク等が挙げられており、2010年の中国経済について慎重な見方を示している。一方、同時に発表された10年の主要な経済目標では、経済成長率の目標が09年実績を下回り、消費者物価上昇率の目標が09年の目標より低くなっている(表1)。インフレやバブルを警戒した引締めによって経済成長が減速することが想定されているものと考えられる。なお、経済成長率を8%前後としたのは経済発展パターンの転換や経済構造の調整を誘導するため、また消費者物価上昇率を3%前後と09年の下落から上昇に転じるとしたのは、昨年の金融緩和の効果がタイムラグをもって現れるため等と説明している。以下では、全人代で示された経済政策のうち、特に金融政策を議論したい。

  2. まず、10年のマクロ経済政策全体のスタンスをみると、「引き続き積極的な財政政策と適度に緩和された金融政策を実施」と09年と同様のスタンスを維持しつつも、「インフレ期待の誘導を上手に処理する」と09年には無かった記述が加わり、インフレ抑制への姿勢を示した。また、10年の金融関連の目標値(新規貸出とマネーサプライ(M2))を示しており(表2)、「09年の実績数値を下回っているが、依然として適度にゆとりのある政策目標」としている。人民元為替レートに関しては、「合理的な均衡水準における人民元為替レートの基本的な安定を保つ」と09年と同じ表現となっている。

  3. 09年の金融動向をみると、新規貸出が約9.6兆元(前年比95.3%増)、マネーサプライ(M2)が前年比27.7%増と09年目標を大幅に上回り、高い伸びとなっている(図3)。上記の政府活動報告における指摘のとおり、金融緩和の効果には波及のタイムラグがあり、10年に入って効果が現れてくると考えられる。これを警戒し、当局は、手形による資金の吸収、銀行の窓口指導、預金準備率の引上げ等引締め方向の政策を行なっているが、金利は低い水準を維持している(図4、5)。2月の消費者物価上昇率は、春節の影響もあり、前年比2.7%上昇と1年物の預金基準金利2.25%を上回っている(図6)。金利引上げによる金融引締めは、景気の減速を通じて、雇用問題を悪化させ社会問題につながるリスクが高いため、まずは金利以外の引締め策(預金準備率の引上げ等)の効果を見極めた上で、最終的に金利引上げの必要性が判断されると考えられる。

  4. 為替レートについては、08年7月から事実上のドルペッグとなっており、名目実効為替レートは、09年に入り、元安の方向を示している(図7)。グローバルインバランスの是正のために、人民元の切上げが言われているが、人民元の切上げは輸出産業への影響を通じて雇用問題を増大させる懸念があるため、この観点からは当局は慎重と思われる。政府活動報告には、「国際収支の状況を改善する」ことが目標に掲げられており、「先進的な技術装備、カギとなる部品および国内で供給不足となっている物資の輸入を重点的に拡大し、諸般の輸入促進政策と利便化措置の安定化をはかる」ことにより、貿易黒字額をいくらか縮小させる方向が示されている。他方、為替の切上げはインフレ抑制に有効であるため、その観点で切り上げる可能性はある。インフレやバブルを抑制しつつ、経済成長を維持できるか。中国当局は難しい局面に立たされている。


表1 2010年主要任務の主要な目標
表2 2010年 金融関連の目標値
図3 貸出残高とマネーサプライ(M2)
図4 預金準備率と政策金利
図5 中央銀行手形の発行額
図6 消費者物価上昇率
図7 人民元の名目対ドルレートと名目実効レート

担当:参事官(海外担当)付 石黒 智也 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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