今週の指標 No.952 目次   前へ   次へ 2010年3月1日

英国:小売売上の最近の動向〜推計方法の変更が及ぼす影響〜

<ポイント>

  1. 英国の小売売上統計は、英国統計局(以下、統計局)が公表している小売売上と、BRC(英国小売連盟)が公表している小売売上モニターがある(注1)。2009年12月の小売売上(金額)は、統計局が前年同月比3.6%、BRCが同6.0%となった(図1)。これを受けてBRCは、クリスマス商戦は好調であったと回答する企業が多く、統計局の公表値は悲観的過ぎるとのコメントを発表した。それに対し統計局は、統計の数字の違いは、カバーしている企業の範囲の差であるとしている(注2)。しかし、BOE(イングランド銀行)が毎月行っている支店調査においても、12月のクリスマス商戦期は好調で、売上が前年比で5%以上増加したと回答した企業が6割を超えており、統計局の数字の信頼性に疑問を呈する声が上がっていた(注3)

  2. こうした中、統計局は、10年1月から推計方法を変更したと発表した。小売売上には算入されていなかったガソリンの売上(小売売上全体の11.2%を占める)を新たに算入する一方、これまで含まれていた修繕業(同0.3%)を除外した(図2)(注4)。さらに、サンプルの範囲に影響を及ぼす企業規模の定義の変更や、インターネット販売の統計の整備等、いくつかの変更を行った。結果として、09年12月の小売売上は遡及改定され、前年同月比4.4%となり、BRCの公表値との差は縮まった。統計局は、今後も見直しを続け、統計の信頼性を高めるとしている。

  3. 推計方法変更後の10年1月の小売売上は、統計局が前年同月比3.2%(含ガソリン)、BRCが同1.2%となった(図3)。なお、統計局の小売売上は、数量ベースでは、前月比▲1.8%(含ガソリン)、前年同月比0.9%(含ガソリン)となった。1月は寒波による大雪のため、小売売上は全体的に低調であった。特に、家具を含む家庭用品類の売上が大幅に落ち込んでいる(図4)。

  4. 先行きについては、10年1月にVAT(付加価値税)が15%から17.5%に引き上げられたこともあり、小売売上が急速に回復するとは考えにくい。BOEの支店調査によると、VATの引上げ分を価格に転嫁すると回答した企業は約8割となり(図5)、物価の上昇が消費を抑制するおそれがある。

  5. なお、GDPの個人消費には、サービス消費、非営利団体国内消費、観光消費(注5)も含まれており、個人消費の動きと統計局の小売売上の動きは必ずしも一致しない(図6)。統計局は、GDPの推計方法についても、2011年9月までに、今回の小売売上の推計方法の変更と同様の産業分類の改定を行うとしており、個人消費の数字が改定される可能性がある。


図1 統計局(推計方法変更前)及びBRCの小売売上(金額)
図2 小売売上における産業分類の変更点
図3 統計局(推計方法変更後)及びBRCの小売売上(金額)
図4 統計局:小売売上(金額)の内訳
図5 VAT引上げ分の価格転嫁に関するアンケート結果
図6 個人消費及び小売売上(数量)

(注)
1.BRC(英国小売連盟)の小売売上モニターには、英国全体、既存店ベース、ロンドンの3種類の系列があるが、ここでは英国全体の小売売上を取り上げる。
2.BRCは、以前にも、金融危機直後の08年9〜12月の小売売上について、統計局の公表値が実態に比べて強すぎるというコメントを出している。なお、統計がカバーしている範囲は、統計局が英国全体の約95%、BRCが同約60%。
3.BOE “Agents' Summary of Business Conditions” (2010年1月)による。調査数は約170社。
4.スーパーマーケット及びガソリンスタンドでの売上を含む。
5.「観光消費」は、英国内の居住者による海外における消費から、英国外の居住者による国内での消費を差し引いたもの。

担当:参事官(海外担当)付 昨間 美里 直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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