今週の指標 No.950 目次   前へ   次へ 2010年2月15日

高齢者の消費を活性化できるか

<ポイント>

  1. 個人消費は、2009年4-6月期以降耐久財を中心に持ち直しの動きが続いている。家計消費状況調査等を用いてマクロの消費支出額(一世帯当たり消費支出×世帯数)の動きを世帯主年齢別にみると、世帯数の約5割(2006-08年平均、二人以上世帯)を占める60歳以上の世帯は、消費額は平均より少ないものの、マクロの消費を下支えしている(図1)。一方、60歳未満の現役世帯の消費は、名目賃金が伸び悩んだこともあって力強さに欠けている。特にリーマン・ショック後は雇用者報酬の減少やマインドの悪化から、35〜59歳の世帯を中心に消費額が減少した。

  2. ここで、マクロの消費支出額を一世帯当たりの消費額と世帯数に分けると、高齢者世帯も現役世代と同様に一世帯当たりの消費額は伸び悩んでおり、概ね動きは一致していることがわかる(図2)。さらに、世帯数をみると60歳以上の世帯数が趨勢的に増加している一方で、現役世帯の世帯数は緩やかに減少している。こうしたことから、高齢者消費が堅調でマクロの消費を下支えしているといっても、それは主に高齢者世帯の世帯数増加によるものと言える。

  3. 世帯数が拡大を続けている高齢者の消費をさらに活性化させることは、マクロの消費を活性化させることに貢献するだろう。その方法として、例えば高齢者の就業率をさらに高めることが考えられる。内閣府「高齢者の生活と意識 第6回国際比較調査結果」によると、就業している高齢者への「今後も収入の伴う仕事をしたいと思うか」という質問に対して、「今後も仕事を続けたい」と答えた割合は9割近い。ところが無職の高齢者に同様の質問をすると、その割合は1割強に留まる(図3)。これはアメリカやスウェーデン等でも同様の傾向である。さらに、このように答えた理由をみると、就業中の高齢者は金銭以外にも仕事のおもしろさや老化防止といった理由が多い(図4)。一方で無職の高齢者が就業したくない理由をみると、日本は他国と比べて「仕事のミスマッチ」の割合が高く、「仕事以外にしたい事がある」の割合が低い。こうした結果から、高齢者は就業している間は就業意欲が高く、労働市場から退出すると再び参入することが困難である一方で、退出した高齢者の中には雇用のミスマッチ解消によって就労する可能性がある人がいることを示している。

  4. 就業する高齢者が増えると、高齢者世帯の平均的な消費パターンが変化する。60歳以上の世帯のうち、勤労者世帯と無職世帯の品目別支出ウェイトを比較すると、勤労世帯は電熱光費や医療費といった「基礎的消費」のウェイトが無職世帯より低い一方で、耐久財・外食・教育・衣料品といった「選択的消費」のウェイトが高い(図5)。そのため、高齢者の就業率を高めることはこうした選択的支出の拡大を通じた消費活性化が期待できる。60歳以上の世帯に占める無職世帯の割合は約3分の2であり、勤労者世帯の月平均消費支出が約28万円であるのに対して無職世帯は約21万円である(注)。今後退職を迎える雇用者の再雇用、もしくは高齢者の就業形態の柔軟化等を進めていくことが今後の消費活性化に繋がると期待される。

    (注)2008年。勤労者世帯は無職世帯よりも世帯人員が多いことや世帯主年齢が低い等の違いがあるため単純に比較することには留意が必要だが、世帯人員一人当たりでみても勤労者世帯の消費支出の方が多い。

図1 支出総額(一世帯当り支出額×世帯数)推移
図2 一世帯当りの消費額と世帯数の推移
図3 就労の有無で大きく異なる高齢者の就業意欲
図4 勤労・高齢者が就業したい理由と無職・高齢者が就業したくない理由
図5 勤労・高齢者世帯が増えたときの消費パターンの変化

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 神田 慶司 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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