今週の指標 No.948 目次   前へ   次へ 2010年2月1日

資本収支の動向

<ポイント>

  1. 最近の我が国の資本収支の動向を見ると、リーマンショック以降、2008年第4四半期、2009年第1四半期と資本収支の赤字(流出超)は一時的に拡大したものの、2009年第2四半期以降、低水準で推移している。内訳をみると、2009年第1四半期に直接投資の赤字幅が縮小したことに加え、2009年第2四半期にかけて、その他投資の黒字幅が縮小した以上に、証券投資の赤字幅が縮小した(図1)。
  2. まず、直接投資の動向について、対外直接投資と対内直接投資の推移をみると、2008年第4四半期に対外直接投資が大幅に実行された後は、実行超幅が小さくなったため、赤字幅が縮小している。2008年第4四半期における対外直接投資の一時的な拡大については、本邦金融機関による北米向けの大口の資本参加や、医薬系企業によるアジア向けの事業拡大を目的とした大型買収等の影響がある(図2)。
  3. 次に、証券投資について、株式、中長期債、短期債に分けてみると、いずれも2008年第4四半期で大幅な赤字を計上したものの、2009年第2四半期以降は、株式が流入超に転じ、中長期債についても赤字幅を縮小させている(図3)。
  4. そこで、対外証券投資の株式について、地域別にみると、アメリカ・EU向けを中心として2008年第4四半期に大幅な取得超により赤字を拡大させたが、その後徐々に赤字幅が縮小していることがわかる(図4)。赤字を拡大させた背景には、欧米株価の下落や円高の進行による保有外国株式の評価減を受けて、時価総額の大きい先進国株式を多く組み入れる傾向がある年金基金が、リバランス取引を行い株式の取得を進めたこと等があるとみられる。他方、対内証券投資の株式について、地域別にみると、2009年第1四半期までアメリカ、EU、アジアそれぞれの国・地域からの処分超が続いており、リーマンショックの影響により資金を引き揚げる動きがあったと見られる(図5)。ただ、2009年第2四半期以降については、取得超となっており、日本の株価を押し上げる要因の一つとなっている可能性がある。
  5. また、対外証券投資の中長期債について、地域別にみると、アメリカ・EU向けを中心として、2009年第1四半期に大幅な取得超から赤字を計上している。その後赤字幅が縮小しているが、金融資本市場の落ち着きを見ながら中長期債取得の動きが戻ってきていると推測される(図6)。他方、対内証券投資の中長期債については、円資金の調達困難化に伴う外国人投資家のポジション解消から、2008年第4四半期に大幅な赤字を計上しており、それ以降も赤字が足下まで続いている(図7)。
  6. 近年各国の規制緩和や金融工学の高度化に伴い、国際資本移動が拡大傾向にあり、各国の金融市場に対する海外投資家の影響力が増大している。また、世界の経常収支の不均衡の先行きを考える上でも、資金フローの動向を見極めることが重要であり、今後も資本収支の動向が注目される。

資本収支の動向 直接投資の動向 証券投資の動向 対外証券投資(株式)に係る地域別流出入の動向 対内証券投資(株式)に係る地域別流出入の動向 対外証券投資(中長期債)に係る地域別流出入の動向 対内証券投資(中長期債)に係る地域別流出入の動向

(備考)
1. 図1−図7:財務省「国際収支の状況」より作成。原数値。2009年第4四半期については、2009年10月、11月の合計値であるため、比較の際には留意を要する。
2. 図1の証券投資については、証券貸借取引を含む。図3−図7については含まない。
3. 日本銀行「2008年の国際収支(速報)動向」、国際協力銀行「2008年わが国の対外直接投資動向」を参照。

担当:参事官(経済財政分析ー総括担当)付 寺岡 亮 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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