今週の指標 No.947 目次   前へ   次へ 2010年1月25日

ブラジル:FFV技術と共に成長する自動車産業

<ポイント>

  1. 2014年のサッカー・ワールドカップと2016年のリオデジャネイロ・オリンピックという世界的な二大イベントの開催を控えたブラジルは、今後高い経済成長が見込まれる国としても注目を集めている。経済成長率は、世界的な金融危機の影響を受け、08年後半以降、四半期ベースでは前期比マイナスとなっていたが、利下げ等の金融緩和策、減税等の景気刺激策の政策効果もあって、設備投資と個人消費を中心に回復し、09年第2四半期以降再び成長軌道に戻っている(図1)。

  2. ブラジルの新たな成長市場として注目を集めているのが自動車市場である。09年のブラジル国内の動車販売台数(新車登録数)は前年比11.4%増の314万台となり、初の300万台突破と過去最高の水準となった(図2)。リーマン・ショック発生後の08年11月には、月間販売台数がそれ以前のピーク(同年7月)の6割程度の水準に落ち込んだが、自動車購入時にかかる工業製品税(IPI)に対する減税の実施や(注1)、利下げによる自動車ローン金利の低下等を受けて、09年前半にはリーマン・ショック前の水準を回復した。特に、国内自動車販売の大部分を占める乗用車が前年比12.6%の伸びとなっており、減税措置が自動車の購入促進に大きく寄与したことがうかがえる。また、乗用車販売を製造業者別にみると、1位はフォルクスワーゲン、以下、フィアット、GM、フォードと続く(図3)。アメリカ本国では苦戦を強いられているGMとフォードであるが、ブラジルでの販売は好調で、GMは09年ブラジルにおける過去最高の販売台数(59.5万台)を記録した(注2)。また、シェアはまだ小さいものの、韓国の現代(ヒュンダイ)は急激な販売数の伸びを見せている。

  3. 一方、自動車生産の動向をみると、08年後半には景気の後退を受けて大幅に生産が減少したものの好調な国内の自動車販売に牽引され急速に回復している(図4)。この結果、09年の年間生産台数は過去最高であった前年(322万台)よりもやや減少したものの、318万台と高い水準を維持した。ブラジル中銀のアンケート調査によれば、10年の個人消費は引き続き堅調な伸びが予想されており、また、09年末で終了した耐久財購入に対する減税についても、環境対応車(FFV)の購入に対する延長措置(10年3月末まで)が決定された。こうしたことから、自動車製造各社では自動車市場の更なる成長を見込んでおり、生産拡張のための投資計画を発表している。

  4. また、ブラジルの自動車産業の特徴として、FFV(フレックス燃料車)が普及しているという点に注目したい。FFVとは、ガソリンでもエタノール(バイオ燃料)でも、またその両方をどのような比率で混合しても走行可能な自動車のことであり、エタノール原料となるさとうきびの豊富な生産を背景に、ブラジルでは近年急速に普及している(図5)。現在、世界各国では、石油依存からの脱却と環境問題への対応として、政府と企業による次世代自動車(環境対応車)開発と新燃料の導入が進められている(注3)。新燃料の導入に関しては、70年代のオイルショックを契機に一部の国においてガソリンとエタノールの混合燃料の利用が政策的に進められてきたが、その普及は限定的であった。しかし、近年の環境意識の高まりや原油価格の高騰を受けてバイオ燃料が見直されており、アメリカをはじめ日本や欧州でもその導入に向けた動きが広がりつつある。現在、環境問題に対応した自動車開発においては、ハイブリッド車や電気自動車関連の開発が世界の主流となっているが、一部の国ではバイオ燃料の原料となる農作物等の生産に強みがあり、こうした国々においてはFFVが普及するという可能性もある。特にブラジルはさとうきびの生産量が世界一であり、FFV技術はブラジル発のグローバル・スタンダードとなる可能性があると言われている。

  5. ブラジル経済の今後の見通しについて、ブラジル中銀のアンケート調査では、10年のGDP成長率は5%台を予想しており、ブラジル経済は回復から更なる拡大過程へと移行するとしている。現在、自動車の普及状況は「国民7人に対し1台」とされているが(注4)、経済成長に伴う所得の向上により、国民の自動車保有のさらなる拡大が見込まれる。また、世界経済が持ち直してくるにつれてFFV技術で強みを持つブラジルの自動車産業の国際競争力が増してくる可能性がある。自動車産業はGDPの5.3%を占め、150万人の直接・間接の雇用を創出しており、その成長は経済全体に与える影響も大きい(注5)。自動車市場を巡る今後の動向に注目したい。


    注1:例えば、1000cc以下の小型車にかかるIPIを通常の7%から0%へ引下げる措置等。
            また、減税期間は、当初08年12月12日から09年3月末までであったが、その後2度延長され、
            09年9月末までとされた。FFVに対しては更に期間が延長され10年3月末までとされた。
    注2:ANFAVEA(ブラジル自動車製造業者協会)より。乗用車と小型商業車の合計台数。
    注3:経済産業省「次世代自動車戦略研究会」資料等を参照。
    注4:日本自動車工業会、IMF資料等を参照。
    注5:JETRO「フレックス車へのIPI減税を3月末まで延長(ブラジル)」2009年11月30日

図1:実質経済成長率
図2:国内自動車販売台数
図3:国内乗用車販売における各製造業者のシェア
図4:国内自動車生産台数
表5:国内自動車販売におけるFFVの割合

(備考)
Banco Central Do Brasil (ブラジル中央銀行)、ANFAVEA(ブラジル自動車製造業者協会)、
IBGE(ブラジル国家統計局)、CEICデータより作成。

担当:参事官(海外担当)付 高橋 貴裕 直通:03-3581-9287

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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