今週の指標 No.943 目次   前へ   次へ 2009年12月7日

アメリカ:景気の下押しが懸念される州・地方政府財政の動向

<ポイント>

  1. アメリカ経済は、景気刺激策による効果もあり、7〜9月期の実質GDP成長率が5四半期ぶりにプラスに転じるなど、持ち直しの動きが広がっている。しかしながら、州・地方政府の財政をみると、景気後退に伴う税収の落ち込みなどを背景に財政赤字が継続しており、厳しい財政運営を強いられている(図1)。アメリカでは多くの州・地方政府で均衡財政が義務付けられているため、州・地方政府財政の悪化は、増税や歳出削減等を通じて需要を押し下げ、景気の下押し要因となることが懸念される。以下では、アメリカ経済の先行きに対する懸念材料となりうる州・地方政府財政の最近の動向を分析する。

  2. アメリカの州政府は、当該財政年度において財政赤字が発生した場合には、通常、まずは各州が保有する財政安定化基金(*1)による補填を行っている。しかし、近年の医療関連支出の膨張などを受けて州財政は逼迫しており、各州の基金も減少傾向にある。財政支出比率(財政安定化基金を含む財政収支の一般歳出に対する割合)をみると、09年度は4.8%と大幅な低下が見込まれ(図2)、基金の余剰が大きいテキサス州、アラスカ州を除くとさらに2.7%にまで低下が見込まれるなど、各州の財政安定化基金を通じた年度内財政調整機能は低下しつつある。

  3. こうした現状を踏まえ、今回の景気刺激策では総額1,440億ドルの州財政支援措置が決定され、09年9月までに438億ドルが拠出されている。しかし、こうした措置にもかかわらず、今夏のカリフォルニア州のように財政危機に陥る州も現れており、財政悪化が著しい州を中心に、公共サービスの縮小や政府職員の解雇、あるいは増税といった「予算上の厳しい選択(budgetary hard choice)」に踏み切る動きが広がっている(図3)。

  4. 歳入の動向をみると、08年後半以降、税収の大幅な低下が続いたが、州財政支援措置が本格化した09年1〜3月期以降は、前期比プラスを維持している(図4)。しかしながら、足元をみると、新年度予算(多くの州では7月〜6月)の調整の遅れなどを背景に連邦政府補助金がマイナスに転じる一方、各州による増税の結果、個人所得税を中心に税収が5四半期ぶりにプラスに転じた。予算・政策優先度研究所(CBPP:Center on Budget and Policy Priorities)によれば、09年度は少なくとも30州において増税が実施され、今年度も8州で新たな増税法が制定される見込みである。

  5. 一方、歳出についても、景気後退を受けて福祉関連を中心に拡大圧力が高まっているものの、歳出全体でみると福祉関連も含めて抑制が続いている(図5)。08年秋以降、歳出削減に踏み切る動きが広がっており、各種福祉プログラムの縮小や教育機関への補助削減、政府職員の解雇や賃金カット等が実施されている。特に、雇用については、州・地方政府職員の全雇用者数に占める割合は15%程度であるが、昨年秋以来、減少する傾向が続いている(図6)。足元では対策の効果もあり持ち直しの動きがみられるものの、今後、再び減少傾向が強まれば、経済への影響が懸念される。全米州予算担当者協会(NASBO:National Association of State Budget Officers)によれば、09年度の経常的歳出は過去30年間で最大の減少幅となる前年度比▲3.4%となり、10年度についてはさらに減少幅が広がって少なくとも同▲5.4%に達すると予想されている。

  6. 州別の景気動向をみると、景気が悪化している州の数は、足元ではピークアウトの動きがみられるものの、依然として過去最悪の水準にある(図7)。景気回復の遅れから新たな歳入不足が発生すれば、更なる増税や歳出削減が行われる可能性があり、需要の下押し圧力は一層強まると考えられる。連邦政府による州財政支援措置の終了までに地域経済の安定的な回復が達成されなければ、州・地方財政の悪化は景気回復の足を引っ張る要因となろう。


    *1 財政収支好調時に剰余金を積み立て、財政危機時に取り崩す、いわゆる年度間財政調整基金。

図1 州・地方政府における財政赤字の推移
図2 州一般基金の財政収支比率(全州合計)
図3 各州の財政均衡措置
図4 州・地方政府における経常的歳入の推移
図5 州・地方政府における経常的歳出の推移
図6 州・地方政府雇用者数(前月差)
図7 州別景気動向

担当:参事官(海外担当)付 小池 訓文 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ   次へ