今週の指標 No.940 目次   前へ   次へ 2009年11月24日

販売価格へ波及が進まない原材料価格の上昇

<ポイント>

  1. 国内企業物価は、2008年夏にピークを迎えた後、景気後退や金融危機の影響で原油などの商品価格が急落したため、石油・石炭製品、化学製品、非鉄金属など幅広い品目で下落した。その後、世界景気の持ち直しとともに商品価格が上昇したことから(図1)、国内企業物価は前月比で下落幅が徐々に縮小し、足下では横ばい圏内で推移している(図2)。本稿では、原材料価格の変動が最終的な消費者への販売価格までどのように波及するかを、川上である企業間取引と川下である企業・消費者間取引に分けて検証する。

  2. まず、企業間取引の段階において、アメリカと対比しながら需要段階別の企業物価(アメリカは生産者物価)を確認する。結果をみると、アメリカは素原材料の上昇が最終財まで波及が進んでいるが、日本は波及が進みにくいことがわかる。特に、最終財は素原材料や中間財の動きに殆ど影響を受けていない(図3)。最終財価格の動きを品目別に分解すると、日本はアメリカと比べ、エネルギー関連や食料品の価格変動が小さく、商品価格との連動性が弱い(図4)。また、日本では耐久財と資本財の価格が恒常的に下落しており、最終財の趨勢的な下落基調を生み出している。

  3. 次に、日本における企業から消費者への価格波及について、企業物価と消費者物価の変動率の比較により検証する。具体的には企業物価指数と消費者物価指数で共通に存在する主な品目を採り上げ、2000年代前半期の物価下落局面と後半期の上昇局面に分けて比較を行った(図5)。その結果、前半期の特徴として、企業物価の下落幅に比べ、消費者物価の下落幅が大きい傾向がみられた。一方、後半期は、大半の品目で企業物価に比べ、消費者物価の上昇幅は小さい。以上から、企業は材料や仕入価格が値下がりした場合、販売価格を比較的大きく値下げしているが、逆に材料や仕入価格が値上がりした場合は、販売価格の値上げに踏み切りにくい様子がわかる。

  4. さらに、企業の仕入価格と販売価格の関係について、仕入価格の変動の販売価格への転嫁状況をみるため、短観のDIから擬似的な交易条件を求めた(図6)。結果をみると、マイナス幅が拡大しており、足下では原材料価格の上昇を販売価格に転嫁しにくい状況が強まっていることがわかる。特に、価格交渉力の弱い中小企業ではその基調がより鮮明となっており、業況を悪化させる要因の一つとなっている可能性がある。

  5. 以上から、近年のわが国では、企業間取引、企業・消費者間取引のいずれにおいても、川上から川下への価格転嫁が行われにくい環境にあることがわかった。このため、たとえ原材料価格の上昇が続いたとしても、最も川下の販売価格を押し上げる力は限定的と考えられる。また、販売価格が上昇しにくい要因として、消費者の低価格志向の強まりも影響していると思われる。川下への価格転嫁が進みにくい状況が続けば企業収益の圧迫につながるため、今後の動向には注意が必要である。

図1 商品市況の動向
図2 国内企業物価の推移
図3 日米の企業物価・生産者物価(需要段階別)
図4 日米の企業物価・生産者物価(最終材)
図5 小売価格と企業間取引価格の変動比較
図6 販売価格への価格転嫁の動向

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 大野 高 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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