今週の指標 No.936 目次   前へ   次へ 2009年10月19日

ドイツ:労働市場と操業短縮手当

<ポイント>

  1. ドイツ経済は、2008年第2四半期から実質GDP成長率が4四半期連続で前期比マイナスとなるなど景気後退が続いてきたが(図1)、この間失業率は、7.8%から8.2%(ドイツ連邦雇用局ベース。以下同様)に上昇したものの、09年4月以降は8.2%または8.3%で推移するなど、横ばいとなっている(図2)。以下では、景気が後退しているにもかかわらず失業率が上昇しない理由及びドイツにおける労働市場の見通しについて分析を行う。

  2. まず、失業率が横ばいで推移している理由として、特に政府が実施している操業短縮(以下「操短」と呼ぶ)手当が重要である。

  3. 操短とは経済的要因などによって企業が労働者の労働時間を短縮し、その分給与を引き下げることである。操短手当は操短の対象となった労働者のうち一定の支給要件を満たした者に対して、子どもの有無に応じて労働者の収入減少額の60%または67%がドイツ連邦雇用局によってが支給される(注1)。支給期間は、09年1月より段階的に拡張され、現在最長24ヶ月となっている。

  4. 操短手当の支給者数を見ると、支給者数は08年末から上昇を始め、09年6月には143万3269人が支給を受けている(図4)。その結果、ドイツ連邦雇用局の試算によると、操短手当により44万8000人の雇用が維持されたとしている。これは、労働力人口が一定と仮定すると、操短手当により失業率は1%程度押し下げられたことになる(09年6月時点)。

  5. それでは、今後も失業率の横ばい傾向は続くと考えられるのであろうか。以下で分析を加えていく。まず経済の見通しについては、生産・輸出が持ち直しており、受注・景況感も改善を続けていることなどから、先行きについても緩やかな持ち直しが見込まれる。労働市場の見通しについても、ドイツのIfo経済研究所が企業に対して行っている調査(図5)によれば、企業の雇用見通しは09年4月以降改善傾向にある(注3)。

  6. 一方、操短手当の支給期間は最長24ヶ月であることから、08年9月のリーマン・ショック後に操短手当の支給を受け始めた労働者については、2010年冬頃から支給が打ち切られる。このため、操短による失業率抑制効果は、2010年の終わり頃から剥落していくと考えられる。

  7. したがって、ドイツの労働市場は、当面は操短手当の効果や経済の緩やかな持ち直し、企業の労働力需要の増加により、失業率上昇が抑制されると考えられる。しかしながら、2010年冬頃から操短手当の効果が剥落し、失業率の上昇要因となる可能性がある。このような労働市場の悪化が、景気回復の足かせとなるリスクには充分留意する必要がある。


    (注1)
    3,000ユーロの給与の支払いを受けていた労働者が、操短により1,000ユーロの給与カットとなった場合、その60%の600ユーロが支給される。したがって、操短が行われた結果、この労働者は2,600ユーロの収入を得ることとなる(図3)。

    (注2)
    国際機関等も緩やかな持ち直しを予想しており、IMFは09年10月1日に公表した世界経済見通しの中で、2010年のドイツの経済成長率については0.3%と見込んでいる。

    (注3)
    09年9月にIfo経済研究所から発表された2010年3月までの雇用についての見通しは、前月比で悪化する見通しだが、これは製造業において労働需要が低下したためである。しかしながら、操短の利用を企業が計画しているため、失業率の上昇要因にはつながりにくいと推測される。

図1 実質GDP成長率
図2 失業率の推移
図3 操短手当の支給例
図4 操短手当受給人数の推移
図5 企業の雇用見通し(今後6ヶ月)

担当:参事官(海外担当)付 當麻 江美 直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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