今週の指標 No.934 目次   前へ   次へ 2009年9月28日

アメリカ:中小金融機関の現況と課題

<ポイント>

  1. 2009年3月以降、各国当局の対策の効果から金融市場は短期市場を中心に落ち着きを取り戻しつつある。しかし、アメリカの金融機関の経営状態は依然として予断を許さない状況にあり、とりわけ中小金融機関では09年初以降でも破たん件数が急増するなど厳しい環境が続いている。連邦預金保険公社(FDIC:Federal Deposit Insurance Corporation)によると、FDICが保証の対象としている金融機関(08年末時点:8,305行)のうち、09年初〜9月18日までの期間で、総資産額が10億ドルを下回る中小金融機関を中心に94行が破たんしている(図1)。また、FDICが問題視する金融機関数も全体の5.1%にあたる416行に急増している(図1)。

  2. 中小金融機関のバランスシートを資産の側面からみてみると、大手金融機関に比べて、(1)総資産に占める不動産担保融資残高が大きいこと、(2)不動産担保融資残高に占める商業用不動産向けの融資残高が大きいことが特徴として挙げられる(図2)。

  3. 不動産担保融資は、不動産価格の変化により担保価値も変化するため、融資が不良資産化した場合には不動産市況の影響を直接的に受ける。直近では、住宅価格は一部に下げ止まりの兆しがみられるものの、住宅・商業用不動産価格ともにピーク時からの下落幅は大きく、先行きの不透明要素が大きい(図3)。また、住宅市場が06年に調整局面入りしたのに対し、商業用不動産市場が本格的な調整局面に入ったのは07年後半とみられ、直近においても依然として空室率は上昇しているなど調整が続いている(図4、図5)。さらに、商業用不動産向け融資の満期は5年前後が多いとされている。このため、これらの借換えがピークを迎える10〜13年にかけて、融資先の資金繰り悪化により、同融資の劣化が一段と進む可能性がある。

  4. 一方で、中小金融機関の不良資産に対する引当準備金は不足傾向にある。総資産10億ドル未満の金融機関における不良資産に対する引当準備金は06年1〜3月期をピークに減少しており、09年4〜6月期では48.9%まで落ち込んでいる(図6)。このため、前述の商業用不動産向け融資を中心に資産の劣化が進むと、引当準備金でカバーできない損失が発生し、経営状況が急速に悪化する可能性がある。増資等の措置が適切に実施できない場合を想定すると、現状の資本水準は必ずしも十分とは言い切れず、破たんの懸念が残る(図7)。

  5. 以上のことから、中小金融機関の経営は、今後も当面の間厳しい状況が続くと予想され、結果として中小金融機関の破たん件数は更に増加する可能性がある。これまでのところ、中小金融機関の破たんは、一行ごとの規模が小さいため、リーマン・ブラザーズの破たんのように直接的に金融システム全体を揺るがす問題には発展していない。一方で、預金保険を提供するFDICの資産残高は、支払準備金繰入れにより大幅に減少している。このため、今後更に破たん件数が増加する場合には、預金保護に対する不安感等を通じて間接的に他の金融機関にも影響を与える可能性があり、動向を注視する必要がある(図8)。


図1 金融機関の破たん件数
図2 資産の内訳
図3 不動産価格の推移
図4 建設支出の推移
図5 商業用不動産の空室率と延滞率
図6 不良資産引当率
図7 レバレッジ比率の試算
図8 FDIC預金保険準備率推移

担当:参事官(海外担当)付 鷹野 洋 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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