今週の指標 No.932 目次   前へ   次へ 2009年9月14日

タイ:生産の増加は景気回復につながるか

<ポイント>

  1. タイの生産の増加が続いている。その要因としては、中国向け輸出の持ち直しと在庫調整の進展が考えられる。以下で詳しくみてみよう。

  2. 製造業生産指数の前月比(季節調整値)をみると、2008年末頃は大幅に減少したが、09年1月以降プラスに転じ、7月は1.9%の増加を示し、前年同月比でみても09年2月以降、マイナス幅を縮小させている(図1)。生産に占める輸出割合別にみると、輸出割合60%超の品目の生産が、09年1月より顕著な持ち直しをみせている(図2)。この輸出割合60%超の品目の内訳は、電子・電気製品、電化製品といったエレクトロニクス関連が過半を占めている(表3)。タイの生産の増加は、エレクトロニクス関連などの輸出向け生産の回復が寄与していると考えられる。

  3. 輸出の推移をみると、あまり力強さは感じられない。品目別にみると、全般的に前年同月比でマイナスが続いている。輸出額のシェアが大きいエレクトロニクス関連(表5)が、09年1月以降は持ち直しの兆しをみせているが、前年同月比ではマイナスが続いている(図4)。また、国・地域別の輸出をみると、中国向けは、09年1月からマイナス幅を縮小し続け、5、6月の前年同月比はプラスとなっているが、主要な輸出先(表6)は、軒並み前年同月比で大幅にマイナスとなっている(図7)。中国向けの輸出を品目別にみると、08年中国向け輸出のほぼ半分を占める電気機器(エレクトロニクス関連)が、09年1月からマイナス幅を縮小し続け、5、6月の前年同月比はプラスとなっている(図8)。これは中国の景気刺激策(家電下郷(注)等)の効果と考えられる。このように、輸出は、中国向けのエレクトロニクス関連が持ち直しており、輸出向け生産の回復につながっていると推測される。だが、限定的な持ち直しであり、輸出相手国や品目の広がりに欠ける。また、7月は中国向けの輸出が減少する等、懸念材料もある。

  4. 生産が増加しているもう一つの要因としては、在庫調整の進展が考えられる。電気・電子製品の設備稼働率をみると、09年1月には1995年以来過去最低の40.8%まで低下した(図9)。その後、稼働率は上昇し、7月には65.0%と半年で約25%ポイント上昇している。稼働率の上昇は輸出の増加も寄与しているが、この時期に在庫調整が進展したものと推測される。

  5. 以上から、現時点におけるタイの生産増加は、現地の景気刺激策など政策効果に助けられた中国向けのエレクロニクス関連の輸出の持ち直しと、在庫調整が進展したことによると考えられる。しかしながら、その持続性は不透明であり、本格的な景気回復につながるとは必ずしも言えない。タイは、08年の輸出の名目GDP比が約60%であり、景気回復には輸出の回復が欠かせない。今後、輸出先としてシェアが大きいEUやアメリカ等の景気回復がみえてくれば、タイは本格的に景気が回復してくるだろう。

    (注)「家電下郷」とは、農村部における家電普及を促進するために、農民が特定の種類の家電を購入した際に補助金を支給する政策である。07年12月から一部の地域で導入され、09年2月から全国で開始されている。

図1 製造業生産指数の推移
図2 輸出割合別 製造業生産指数の推移
表3 主要品目別 輸出割合別 製造業生産指数ウェイト
図4 品目別 輸出額の推移(バーツベース)
表5 主要品目別 輸出額シェア 表6 輸出先国・地域別 輸出額シェア
図7 輸出先上位5国・地域別 輸出額の推移(バーツベース)
図8 主な品目別 中国向け輸出の推移(バーツベース)
図9 品目別 設備稼働率の推移

担当:参事官(海外担当)付 石黒 智也 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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