今週の指標 No.925 目次   前へ   次へ 2009年6月22日

アメリカ:中古住宅市場の動向

<ポイント>

  1. アメリカの住宅市場では着工の落ち込みや価格の下落等の調整が続いているが、新築住宅については在庫が2009年4月に01年5月の水準まで低下するとともに、一戸建ての着工件数は5月に前月比7.5%増加し、3か月連続のプラスとなるなど、一部に底入れ感が出てきている。ただし、アメリカの住宅市場の9割は中古市場が占めており、その動向は新築の着工にも大きな影響を与えるため、以下では中古市場の動向に焦点を当ててみていく。

  2. 08年末頃より中古市場においては、販売件数に下げ止まりの兆しがみられるようになっており、販売と在庫の各時点の動きを示す在庫循環図をみると、45度線を越え、回復局面に向かいつつある(図1)。しかしながら、政府や民間金融機関のモラトリアムにより先送りされていた差押えが3月以降再開されたことにより、差押え物件が再び増加しているとみられる。また、在庫/販売比率も依然として10か月前後と、通常の水準とされる4〜5か月分を大きく上回って高止まりしている。(図2、図3)。

  3. 足元の中古市場の動向を需要面と供給面に分けてみてみよう。まず、需要面については、需給バランスの悪化と安価な差押え物件に引きずられる形で販売価格の下落傾向が続いていることに加え、FRBが政府支援機関(GSE)保証付き住宅担保証券(MBS)の購入を開始したことによって08年11月頃から住宅ローン金利が大幅に低下したため、住宅取得可能指数は過去最高水準まで上昇している(図4)。また、09年1月からは、住宅支援策として新規購入者に対する8,000ドルの減税が実施されている。こうしたことから、09年1-3月期には住宅ローンに対する需要は相当程度高まっている(図5(1))。しかしながら、金融機関の貸出態度はほとんど緩和されておらず(同(2))、融資を受けるのが困難な状況が続いていることから、需要の増加が販売の増加につながっていないと考えられる。

  4. 一方、供給面については、差押え物件の動向が今後の鍵になると考えられる。差押えについては、住宅ローン金利のリセット時期の到来に加え、景気後退に伴う失業率の上昇により、住宅ローン延滞率の上昇が続いていることから、今後も大量の差押えが続く可能性がある(図6)。また、金利のリセット時期については、サブプライムローンが終息に向かう一方で、リセット期を迎えるオプションARMやAlt-Aローン(注)等が09年後半から急増すると予測されているが、金融機関の貸出態度の厳格化により低金利ローンへの借換えが困難になっていることを考えると、今後も住宅ローンの延滞率は押し上げられる可能性が大きい。さらに、08年後半以降は、変動金利型を中心としてプライムローンにおいても延滞率の上昇幅が拡大傾向にある。これは、失業率の高い州ではプライムローンの延滞率も高くなる傾向がみられるように、実体経済の悪化によるものと考えられる(図7)。

  5. こうした状況を踏まえて中古住宅市場の先行きを考えると、経済の悪化のスピードが緩やかになる兆しがみられる中で需要は高まっており、金融市場が安定化に向かい、貸出態度が緩和されれば販売の増加が期待される。一方、差押え物件が引き続き増加することから、在庫/販売比率の改善は緩やかなものになるとみられ、住宅価格への下押し圧力も当面続くと考えられる。こうした中古市場の影響を受けて新築市場においても価格の下落は続くとともに、中古物件の在庫水準がある程度低下するまでは着工の回復も緩やかなものになるとみられる。さらに、足元では長期金利の上昇に伴って住宅ローン金利が約1か月の間に約0.8%ポイント上昇して5.50%となっており、今後の販売動向への影響が注視される。

    (注)オプションARMローンとは、月々の支払いを利息額以下とするなど、様々な返済方法を選択できる変動金利型住宅ローンの一種。また、Alt-Aローンとは、サブプライムよりは信用力は高いが、所得等の証明書類が不十分との理由でプライムローンの基準に満たないローンを指す。

図1 中古住宅の在庫循環図
図2 中古住宅販売件数及び在庫件数
図3 住宅在庫/販売比率
図4 住宅取得環境
図5 金融機関の貸出動向(購入用プライムローン)
図6 住宅ローン延滞率
図7 失業率とプライムローン延滞率(09年1−3月)

担当:参事官(海外担当)付 熊谷 優子 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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