今週の指標 No.923 目次   前へ   次へ 2009年6月1日

最近の中国経済〜景気刺激策の効果もあり堅調な内需〜

<ポイント>

  1. 2009年4月16日、中国国家統計局が公表した09年1〜3月期の実質GDP成長率は、前年同期比6.1%となり、08年10〜12月期の同6.8%から一段と減速した(図1)。
    中国では、3月5〜13日にかけて、第11期全国人民代表大会(以下、全人代という)第2回会議が開催されており、温家宝首相は「政府活動報告」のなかで、09年の経済成長率の目標を「8%前後」とし、経済構造を更に改善することを確認した。具体的には、「消費需要を積極的に拡大し、経済成長をけん引する内需の役割を強化する」ことを主要任務とし、主要指標について目標値が設定された(図2)。
    財政面では、全人代の「2008年中央・地方予算執行状況及び2009年中央・地方予算案に関する報告」において、積極的な財政政策を実施する姿勢が打ち出された。金融面でも、08年9月から12月まで5回の政策金利の引き下げが行われるとともに、11月には銀行貸出の総量規制が撤廃されるなど「適度に緩和した金融政策」が取られている。このように、世界金融危機以降、中国では内需拡大に向けた取組が財政・金融面ともに進められている。

  2. 以上のような財政・金融政策は、足元の中国経済にどのように影響しているだろうか。全人代以降に公表された中国の主要経済指標をみてみよう(図2)。
    まず、投資については、全社会固定資産投資は09年1〜3月期で前年同期比28.8%に達し伸びが高まっている。同指標の約9割を占める都市部固定資産投資は4月に同34%まで増加、特に、鉄道運輸投資が同94.2%と高い伸びを示している(図3)。4兆元の景気刺激策は、鉄道・道路空港等のインフラ建設(1.5兆元)と農村インフラ建設(3,700億元)で全体の47%程度を占めていることから、その効果が現れているといえる。
    消費については、4月の全社会消費財小売総額は農村部を中心に堅調に推移するとともに、乗用車販売台数も83万台(前年比37.4%増)に達し過去最高を更新している(図4)。減税や農村を対象とした「家電下郷(農村における家電普及)」「汽車下郷(農村における自動車普及)」と称する購入時の補助制度等が自動車販売や農村の消費を喚起している。国務院は、5月に都市部での自動車及び家電の買換えにも補助金を支給することを決定しており、今後は、農村に比べて伸びが鈍化している都市部においても消費の拡大が期待される。
    次に、金融について、マネーサプライ(M2)をみると、4月末時点で同26.0%まで高まっており、銀行の新規貸出額も5兆1,718億元に達していることから、金融緩和によりインフラ投資等に必要な資金供給が行われていることを示している。このように、09年初以降4月までの指標をみると、投資、消費及びM2において、全人代で示された年間目標を上回って推移していることから、内需拡大のための景気刺激策等の効果が現れているといえる。

  3. 上述のように、中国経済には内需に増加傾向が現れているが、4月までの輸出入額は前年比で6か月連続の大幅な減少が続いており、外需が09年1〜3月期のGDPを下方に押し下げている。輸出入額について品目を見ると、輸出では、繊維及び家具・玩具等の労働集約型の輸出品の減少幅が縮小しているものの、電気・電子機器等は回復しておらず、高付加価値製品に対する外需には回復の兆しが見られない(図5)。繊維等の輸出額増加については、増値税(付加価値税)の還付率引上げ等の政策効果の可能性が考えられる。輸入では、鉄・非鉄金属において増加傾向がみられ(図6)、4兆元規模の投資等内需拡大政策が鉄鋼等の輸入増加につながっているとみられる。また、韓国や台湾では、1月以降、中国向け輸出額が増加しており、中国の景気刺激策に対する近隣諸国への好影響も期待される。
    中国経済の先行きについては、投資を中心とした内需が下支えしていくことが予想される。しかしながら、外需の回復については不透明さが残っており、物価の下落や雇用環境悪化(図2)なども、景気の下押し圧力となる可能性があることには未だ注意が必要である。

図1 実質GDP及び産業別成長率の推移 図2 「政府活動報告」における主要目標及び09年の達成状況
図3 全社会消費財小売総額及び乗用車販売台数の推移
図4 都市部固定資産投資の産業別寄与度
図5 品目別輸出額伸び率 図6 品目別輸入額伸び率
(備考)
 1.中国国務院、中国国家統計局、中国海関総署、CEICより作成。
 2.春節の影響があるため、09年1-2月は累積の数値を示している。

担当:参事官(海外担当)付 有村 明子 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ   次へ