今週の指標 No.921 目次   前へ   次へ 2009年5月11日

堅調に推移する金の国際価格

<ポイント>

  1. 昨年秋以降、未曾有の金融危機の影響で世界景気が後退していることを背景に、株式や不動産、原油、穀物などの価格が軒並み大幅に下落している中で、金価格は堅調に推移している。

  2. 金は戦争や金融危機など世界経済の不安が高まると買われやすいと言われる。こうした傾向を検証していく上で、過去の金価格の推移を振り返ってみる。1980年前後、第2次オイルショックによるインフレやソビエト連邦のアフガニスタン侵攻を背景に金価格は一時急騰したものの、その後、1980年代半ばにかけて、インフレの沈静化やドル高(注1)、金利高(注2)などを受けて金価格は下落基調で推移した(図1)。1985年のプラザ合意以降は、ドル安が進んだことなどで、金が買われる局面もみられたが、1990年代に入り、冷戦の終結や、欧州各国の中央銀行による金の大量売却などを背景に、金価格は総じて下落基調で推移した。しかし、その後、1999年にワシントン協定で中央銀行の金売却に制限が設けられ、また、2001年には米同時多発テロが発生し、不安心理が高まるなど、金価格は上昇に転じた。さらに、2003年には金ETF(上場投資信託)が登場し、年金基金や富裕層などの資金が集まり、その需要が増加する中(図2)、経済成長の著しい新興国の需要や、投機資金の流入もあり(図3)、金価格は2007年に史上最高値を更新した。2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻時には、金価格は一時的に大きく下落したものの、その後、世界的な金融不安が広がる中で金価格は堅調に推移している。その背景としては、信用リスクのない金が資金の逃避先の一つとして選ばれたこと、各国の大規模な財政出動で財政悪化懸念が広がり、各国通貨に対する不信感が高まったこと、各国の政策金利の引き下げで金利が低下していることなどが指摘されている。

  3. 金と他の投資対象資産の価格変動を比較すると、近年、他の投資対象資産の価格は大きく変動した後、軟調に推移している一方で、金は相対的に堅実な動きとなっていることがわかる(図4)。また、金と他の投資対象資産の変動について、相関関係を調べると、金はいずれの投資対象資産に対しても相関関係は一定していない(図5)。このことから、他の投資対象資産と長期的に値動きの傾向が異なる金は、リスク分散を図ろうとする投資家の運用の受け皿の一つにもなりうる。金融不安が終息しない中、安全資産とされ、様々な投資家から活発に資金が流入する金の動きが今後も注目される。

    (注1)ドルの上昇はドル建で取引される金価格の上昇につながり、買いが手控えられるほか、利益確定の売りも出やすい。一方、ドルの下落はドル建の金価格の下落となるため、割安感から金の買いが入りやすい。このような性質から金価格はドル・ユーロ相場と連動しやすいと言われる(付図1)。
    (注2)金は利息を生む運用商品ではないことから、金利が高い時期には債券や預金などの運用商品に比べて相対的に魅力が薄まるため、買いが入りづらくなり、金利が低い時期には逆に買いが入りやすくなると言われる。

図1 金価格の推移
図2 世界の金需要の内訳
図3 NY市場における投機筋の金先物ポジション
図4 金とその他投資対象資産の価格変動
図5 金とその他投資対象資産の価格変動の相関関係
付図1 金とドル・ユーロ相場の推移
(備考)
図1 日経NEEDSにより作成。           
図2 WORLD GOLD COUNCIL “Gold Demand Trends”により作成。     
図3、4、付図1 日経NEEDS、Bloombergにより作成。
図5 日経NEEDS、Bloombergにより作成。各資産の週間変動率の相関。

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 大野 高 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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