今週の指標 No.915 目次   前へ   次へ 2009年3月2日

アメリカ:縮小する貿易収支赤字

<ポイント>

  1. アメリカの貿易収支赤字は、輸出、輸入ともに縮小する中で、 このところ急速に縮小している。2008年12月の貿易収支赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は、前月比4.0%減の399億2,900万ドルとなり、03年2月以来の低い水準となった。財輸出は、08年12月は前月比8.6%減(83億ドル減)の887億2,300万ドルとなり、5か月連続の減少となった。一方、財輸入についても、同年12月には同6.7%減(100億ドル減)の1,402億9,300万ドルとなり、5か月連続で減少した。このように、財の輸出入はともに減少が続いているが、輸入額の減少幅の方が輸出額の減少幅よりも大きいことから、08年8月以降、貿易収支の赤字幅は縮小傾向となっている(図1)。

  2. 財輸入の動向を財別にみると、国内最終需要の落込みを受けて、自動車・同部品や資本財などをはじめ、08年半ば以降減少傾向にある。特に、工業原材料については大きく減少しており、財輸入減少の主因となっている(図2)。さらに、工業原材料輸入の内訳をみると、8月以降、原油輸入額の減少が大きく寄与していることがわかる(図3)。これは、原油価格が、世界経済の後退による需要の落込みなどから、史上最高値を記録した08年年央の高値から、直近までで約7割程度下落したことによる(図4)。

  3. もっとも、足元の原油価格は、09年に入ってからは、それまでの著しい下落傾向から、1バレル40ドル前後での比較的安定した推移が続いている(図4)。先物価格をみると、市場では先々は上昇するとみられており(図5)、既に現在の価格が中長期的な需給に見合った水準を下回っているとの見方もある。したがって、今後は、これまでのような原油価格の大幅な低下による原油輸入額の大幅な減少には歯止めがかかると考えられる。

  4. アメリカの輸出入動向の先行きについては、景気後退が深刻化し、国内需要が低迷するとともに、海外需要についても、世界的な景気後退にある中、今後も縮小していくことが考えられる。ISM製造業景況指数をみても、輸出指数及び輸入指数は、ともに活動の拡大・縮小の分岐点となる50を大きく下回る水準で推移しており、しばらくの間、輸出、輸入ともに低調な動きとなることが示唆される(図6)。もっとも、工業原材料の輸入減少の影響が原油価格の下げ止まりによって縮小すると考えられる中、貿易収支赤字の先行きについては、国内需要の低迷による輸入減少と、海外需要の低迷による輸出の減少のバランスに依存すると考えられ、今後とも一本調子の縮小が続くかは不透明であると考えられる。
    なお、09年2月17日に成立した総額7,872億ドル規模の「アメリカ再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act )」においては、いわゆる「バイ・アメリカン」条項が盛り込まれ、同法に基づく事業においては、アメリカ国内で生産された鉄・鉄鋼及び工業製品の使用が義務づけられることとなった(注)。こうした保護主義的な動きも、輸入動向に影響を与える可能性も考えられる。

    (注) なお、「バイ・アメリカン」条項については、適用除外が認められる場合についても列記されており、適用条件についても、「国際的協定のもとでのアメリカの義務に整合的な方法で適用される」と規定されている。ただし、その運用については現時点では必ずしも明確ではない。

図1 貿易収支の推移(国際収支ベース) 図2 財別輸入の推移(通関ベース)
図3 工業原材料輸入の内訳 図4 原油及び原油輸入価格の推移
図5 WTI原油価格の先物カーブの変化 図6 ISM製造業景況指数(輸出入)

(備考)
アメリカ商務省、ISM(全米供給管理協会)等により作成。

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 大塚 昌明 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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