今週の指標 No.910 目次   前へ   次へ 2008年12月8日

減速するインド経済

<ポイント>

  1. インド経済は、06年度以降9%を上回る高い成長を続けており、07年度(07年4月〜08年3月)の実質GDP成長率も9.0%となったが、その後、08年4〜6月期に前年同期比7.9%、7〜9月期同7.6%となっており、伸びがやや鈍化している(図1)。7〜9月期をみると、輸出の伸びが鈍化するとともに輸入の伸びの増加が続いたため、外需がマイナスに寄与した。内需については、民間消費の伸びが鈍化したものの投資の伸びが拡大し、堅調さを維持した。また、原油等の一次産品価格の高騰の影響により、07年後半から物価が上昇を続けていたが、インド準備銀行(中央銀行)が金融政策上重視している卸売物価上昇率をみると、08年8月に前年同期比12.9%まで高まった後、9、10月は、2ヶ月連続で低下がみられる(図2)。
  2. 金融面をみると、08年に入り、アジアの各国では、株価や為替の下落など金融市場に動揺がみられるが、中でも、インドでは特に大きな下落がみられる。08年1月に史上最高値を記録した株価(SENSEX)は、その後下落に転じ、9月に発生した世界的な金融危機の後、更に下落し、11月末時点で年初から約55%の下落となっている(図3)。同時に、07年に増価基調が強まっていたインド・ルピーの対ドル為替レートも、約20%の減価となっている(図4)。
    この背景には、投資家の質への逃避により資金流出していることがある。すなわち、高成長が続いてきたインドへの投資意欲の高まりにより、特にこの2〜3年の間に、直接投資、証券投資、対外商業借入等の海外からの資本流入が急速に拡大してきたが、今年に入り、証券投資等が流出に転じている(図5)。証券投資は、08年1〜3月期以降は流出超となっている。また、08年4〜6月期には対外借入れ等の流入も大きく減少した。しかしながら、直接投資については、7月以降も増勢を維持しており、08年1〜9月をみると、291億ドル(前年同期比177.7%増)となっている。一方、経常収支は、貿易収支赤字のため赤字が続いており、08年4〜6月期には赤字が拡大した。
  3. 景気拡大に鈍化がみられる中、インド準備銀行は、10月に、08年度(08年4月〜09年3月)の成長率見通しを、7月時点の8.0%前後から7.5−8.0%に引き下げている。また、08年半ばまでは、インフレ抑制のため、金融引締めを行ってきたが、10月以降、金融政策を緩和スタンスに転じ、2回の政策金利の引下げ(9.0%から7.5%)、4回の預金準備率の引下げ(9.0%から5.5%)を行っている。
    今後の見通しとしては、9月以降輸出が大きく減速しており、他の多くのアジア諸国と比べ輸出依存度が低いものの(07年の輸出のGDP比約15%)、世界経済の減速が強まる中で今後も更なる輸出の減速が避けられないものとみられる。また、08年半ばまでの金融引締めや、資本の流出も背景とした国内の資金需給の逼迫などによる、投資、消費などの内需への影響も考えられる。こうしたことから、今後も経済は更に減速していくものと見込まれる。加えて、08年11月末のムンバイでの大規模なテロの発生による影響についても懸念される。
  4. また、今後更に景気が減速した場合、金融政策については、このところのインフレ率の低下により、更なる緩和の余地が生じている。他方、恒常的に財政赤字が続いているインドでは(07年度GDP比▲2.8%)、内需下支えのための大規模な財政措置を行うことは難しいとみられる。08年度の財政赤字の状況をみると、上半期のみで、既に08年度当初予算案における財政赤字見込みの約8割の赤字となっている。

図1 実質GDPと需要項目別寄与度
図2 物価上昇率の推移
図3 ムンバイSENSEX指数 図4 対ドル為替レート
図5 国際収支の推移

(備考)
インド中央統計局、ブルームバーグ、CEICデータより作成。

担当:参事官(海外担当)付 高瀬 由希子 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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