今週の指標 No.909 目次   前へ   次へ 2008年12月1日

景気後退局面でも好調な耐久財消費

<ポイント>

  1. 米国サブプライム・ローン問題を端に発した世界経済の低迷と金融市場の混乱は、日本の消費を取り巻く環境を急速に悪化させている。足下では、所得が弱い動きとなっており、消費者マインドは過去最低水準を更新している。それにも関わらず、個人消費は横ばい圏内で推移している。消費の動きを詳細にみると、耐久財が増加している一方で、他の財やサービスは減少しており、明暗が分かれている(図1)。景気後退局面にある中で、なぜ耐久財消費は好調なのであろうか。

  2. 実質耐久財消費の中身を見るために、家計調査等の需要側統計をGDPベースの消費額に近い形へ組み替えると、普及段階にあるテレビ(薄型テレビ)やビデオデッキ(DVDレコーダー等)のほか、パソコンやカメラ等が押し上げていることが分かる(図2)。2008年7-9月については、猛暑の影響でエアコンや冷蔵庫も消費を押し上げている。

  3. 最も耐久財消費を押し上げているテレビの性質に注目すると、価格に対して弾力的(▲1.487)である(付注1)。これは、価格の下落が需要を刺激して消費の拡大が続く可能性を示唆している。実際、2004年頃からの薄型テレビの普及率の上昇テンポは、1970年前後におけるブラウン管カラーテレビのそれに近い(図3)。また、テレビは普及率がほぼ100%に達した後も保有台数が増加し続ける、いわゆる「買い換え・買い増し」型の製品であるため、普及した後も消費が拡大するとみられる。2008年3月時点で国内に保有されている薄型テレビは約3,000万台で、その割合は約25%にすぎない。すべて薄型へ代わるためには追加的に約9,000万台の購入が必要と推計される。したがって、普及段階にあるテレビや、同様に普及段階にあるビデオデッキは、景気の影響を受けつつも息の長い拡大が見込まれる。

  4. 実質耐久財消費を押し上げているもう一つの要因は物価の下落である。実質額は名目額を物価(デフレーター)で割ったものであるため、価格の下落は実質額の増加につながる。アメリカと比較すると、両国とも物価が下落して実質額を押し上げているものの、日本の方が押し上げ幅が大きい(図4)。また、耐久財物価の中身をみると、アメリカでは自動車が基調を決めているのに対し、日本では主にAV機器やIT製品が基調を決めており、構造が異なっている(図5)。耐久財の価格指数は、性能の向上分を物価の下落要因とみなしているため、性能の向上が続く限りは実質消費額を安定的に押し上げ続けるとみられる。ただし、AV機器やIT製品は性能の向上ペースが著しく速いため、購入したときに性能が向上したほど効用(満足感)の増加へつながっていない可能性がある(注1)。そうであれば、特に日本では、実質消費額が実感よりも高めに出やすいことになる。以上のことから、普及段階にある耐久消費財が今後も消費を下支えしていくと見込まれるものの、実質消費のデータの動きが人々の実感とズレている可能性もあり、こうした点を踏まえた上で家計部門の動向を注視していく必要がある。

    (注1)性能の向上に伴って効用も増加し、付加価値の増加につながるという考え方が背景にある。また、製品の性能向上分を物価の動きに反映させる方法(ヘドニック法)はパソコンとデジタルカメラにのみ採用されているものの、激しい価格競争下にある家電業界の販売構造を考えれば、AV機器等の他の耐久財も、性能向上分の多くを物価の動きに反映していると解釈できる。

図1 実質消費支出の財・サービス別にみた寄与度分解
図2 実質耐久財支出の寄与度分解
図3 テレビの普及率と総保有台数の推移
図4 日・米の実質耐久財消費の価格、名目金額要因
図5 日・米の耐久財消費者物価指数の要因分解
備考 推計式

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 神田 慶司 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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