今週の指標 No.897 目次   前へ   次へ 2008年9月22日

オーストラリア:個人消費が減速に転じ、景気減速の兆しが見え始めたオーストラリア経済

<ポイント>

  1. オーストラリア経済は、堅調な個人消費と民間投資の伸びに支えられ16年間にわたる景気拡大を続けてきたが、2008年4〜6月期の実質GDP成長率が前期比年率で1.1%まで低下するなど、足元の景気は減速している(図1)。これを需要項目別にみると、これまで景気拡大を支えてきた個人消費が、1993年7〜9月期以来の減少に転じたことが成長率鈍化の原因となっていることが分かる。また、個人消費の内訳をみると、自動車、飲食料品及び教養・娯楽といった品目がマイナスに寄与している。

  2. こうした個人消費の減速の要因について詳しくみていくと、以下の3つの要因があると考えられる。
      第一に、物価上昇に伴う実質賃金の減少である。 国際的な食料価格やエネルギー価格等の上昇に伴い、07年後半以降、消費者物価上昇率が高まっており、名目賃金が安定的な伸びで推移する中で実質賃金は08年に入ってからは減少に転じているが(図2)、こうした実質賃金の減少が所得面から個人消費の伸びを鈍化させたと考えられる。
      第二に、家計部門の債務負担の高まりである。オーストラリアでは、家計の債務残高が住宅ローン借入れを中心に増加し、GDP比でみて70%と10年前と比べて約1.8倍にまで高まっている。これに加え、06年5月以降の数次にわたる金融引締めによる金利上昇(図3)が利払いの増加を通じて家計の債務負担を更に増加させ、その結果、家計が消費を抑えて貯蓄率を高める、すなわち債務を返済する方向に向かっているとみられる(図4)。
      第三に、資産価格の下落の影響が挙げられる。オーストラリアの株価は世界的な原油価格の高騰や株価下落の影響もあり、07年後半から下落に転じ、足元ではピーク時から30%程度低下している(図5)。これが逆資産効果を通じて足元の消費を押し下げている可能性がある。

  3. 個人消費の見通しについては、景気減速を背景に、オーストラリア連邦準備銀行(RBA)が7年ぶりに利下げに転じており(図3)、また、財政面でも、本年7月から所得税減税(今後4年間で総額約467億豪ドル(GDPの約4%))が実施されていることから、これらの政策の効果により、下支えされることが期待される。しかしながら、今後の消費者物価上昇率が高止まるリスクに加え、資産価格については、このところ住宅価格も下落に転じていることから(図5)、こうした要因が消費に与える影響については注意が必要である。

図1:実質GDP成長率と需要項目別寄与 図2:消費者物価上昇率と実質賃金 図3:政策金利 図4:家計の貯蓄と債務 図5:住宅価格と株価

(備考)
    オーストラリア統計局、オーストラリア連邦準備銀行、データストリームより作成。

担当:参事官(海外担当)付 有村 明子 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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