今週の指標 No.891 目次   前へ   次へ 2008年8月18日

台湾:景気は拡大が続くも個人消費は低調に推移

<ポイント>

  1. 台湾では過去5年間の平均経済成長率が4.9%、さらに2007年第2四半期以降はそれを上回る成長となるなど、景気は堅調に拡大している(図1)。その内訳をみると、輸出主導で景気は拡大しており、一方で内需は緩やかに拡大している。このうち個人消費に注目すると、アメリカの同時多発テロやIT不況等の影響により急減速した01年以降おおむね緩やかな伸びとなっており、とりわけ05年以降は実質GDP成長率を顕著に下回る状況が続いている(図2)。以下では、低調な個人消費の背景について考察する。

  2. まず、交易条件の悪化による実質所得の海外流出が挙げられる。台湾では、02年より輸入価格は上昇し、一方で輸出価格は緩やかな増加にとどまった。この結果、交易条件は悪化し、実質所得が海外へ流出する傾向が強まっている(図3)(注)。実際に、海外からの所得流入あるいは海外への所得流出を表す交易利得・損失をみると、交易利得・損失は03年以降マイナス(=交易純損失)傾向となっているのが分かる(図4)。このため、実質GNI(国民総所得)成長率は押し下げられ、03年以降は実質GDP成長率を下回る推移となっている。

  3. また、労働分配率が低下している可能性がある。雇用者報酬(実質)の伸びの推移をみると、04年より実質GDP成長率から顕著に下回っており、両者のかい離も拡大傾向となっている(図5)。この要因としては、上述の実質所得の流出やグローバル競争の激化等で企業がコスト削減を迫られており、労働コストの抑制を続けていることなどが考えられる。

  4. さらに、このところの消費者物価上昇率の高まりも挙げられる。消費者物価は、台風による作物被害、国際商品市況価格の高騰等を背景に、07年7月より食品、交通・通信を中心に加速し、07年10月には前年同月比5.3%増と94年9月(同6.7%増)以来の高い伸びを記録した(図6)。08年も高水準で推移しており、実質所得のさらなる低下や消費者心理の悪化をもたらしている。

  5. このように、台湾では景気は堅調に拡大する一方で、実質所得の流出や労働分配率の低下、消費者物価上昇率の高まりなどを背景に、家計は非常に厳しい状況にさらされており、個人消費の動向にも注視する必要がある。

    (注)貿易を輸出財と輸入財の交換と考えた場合、一次産品の輸入国にとって、一次産品価格の上昇は同じ量の輸出財と交換しうる一次産品の量の減少を意味することから、その減少分だけその国の実質所得が減少する。逆に、一次産品の輸出国では実質所得が増加するため、輸入国から輸出国への所得移転ととらえることができる。

図1:実質GDP成長率 図2:実質個人消費の推移
図3:交易条件の推移 図4:実質GNI成長率と寄与度
図5:雇用者報酬(名目・実質)の推移 図6:消費者物価上昇率と寄与度
(備考)
    台湾行政院主計処、台湾経済部、CEICデータより作成。

担当:参事官(海外担当)付 中野 英太郎 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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