今週の指標 No.887 目次   前へ   次へ 2008年7月22日

アメリカ:中古住宅販売は下げ止まりの動きもみられるが、底入れにはまだ時間がかかる可能性

<ポイント>

  1. アメリカでは住宅市場の調整が続いている。2008年1〜3月期におけるGDPベースの住宅投資は前期比年率24.6%減となり、06年4〜6月期以降、8四半期連続で二桁台の大幅な減少となった(図1)。また、住宅投資の先行指標となる住宅着工件数をみると、08年6月は特殊要因(注1)により前月比9.1%増の年率106.6万件となり、91年3月(同92.1万件 )以来の低水準となった先月(同97.7万件 )からは増加したものの、直近のピーク時(06年1月:227.3万件)と比べて半分以下の水準にまで落ち込んでいる(図2)。

  2. こうした中、住宅着工の先行指標となる住宅販売件数の動向をみると、住宅需要の減少に伴い06年以降減少傾向が続いているものの、住宅販売全体の約9割近くを占める中古住宅については、08年に入ってからおおむね横ばいで推移しており、一見下げ止まったようにもみられる動きとなっている(図3)。その背景としては、住宅需要の減少等による在庫の大幅な積み上がりから中古住宅価格が07年後半から08年初めにかけて一時やや低下したことや、長期金利の低下に伴い住宅ローン金利が07年後半に一時低下するなどの要因により、購入環境が改善したことが消費者の住宅需要にプラスの影響を与えたことが考えられる(図4、5)。また、中古住宅における販売と在庫の各時点の動きを示した在庫循環図をみると、45度線右下の調整局面にあるものの、08年に入ってから、若干ながら45度線右上の回復局面の方に向かいつつあることがわかる(図6)。

  3. ただし、中古住宅の在庫販売比率(注2)をみると、サブプライム住宅ローンを中心とした差押え物件の増加に伴い住宅在庫が増加していることなどから、依然として過去最高の高い水準(08年5月:10.8か月)となっており(図7)、中古住宅の在庫循環が回復局面入りするまでには今しばらく時間がかかることも考えられる。全米抵当銀行協会(MBA)の見通しにおいても、中古住宅販売の底入れ時期は08年後半と見込まれている。また、中古住宅販売については、住宅ローン金利が長期金利の上昇に伴い6月に再び上昇していることや(前掲図5)、金融資本市場の混乱から住宅ローンの融資基準の厳格化が続いていることから(図8)、先行き低下する可能性もあり、中古住宅市場の動向については、今後も引き続き注視が必要である。

    (注1)6月の住宅着工の増加については、統計を発表したアメリカ商務省では、ニューヨーク市が建築規制を7月1日から変更したことに伴い、建設業者が集合住宅の着工を6月に前倒しした影響であるとし、その影響を除いた場合には住宅着工は前月比4.0%減であると説明している。
    (注2) 「在庫販売比率」とは、住宅が追加供給されないと仮定した場合に、現在の住宅販売に対して何か月分の住宅在庫があるかを示す 指標である。

図1 実質GDP成長率の推移 図2 住宅着工・許可件数の推移
図3 住宅販売件数の推移 図4 住宅価格の推移
図5 住宅ローン金利の推移 図6 中古住宅の在庫循環図
図7 住宅在庫販売比率の推移 図8 住宅ローンの貸出基準

(備考)
アメリカ商務省、全米不動産協会(NAR)、連邦準備制度理事会(FRB)より作成。

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 大塚 昌明、熊谷優子 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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