今週の指標 No.885 目次   前へ   次へ 2008年7月22日

生産と雇用の関係について

<ポイント>

  1. 日本の景気回復は2008年に入り足踏み状態にある。今回の景気回復局面において堅調に推移してきた鉱工業生産はこのところ弱含んでおり、雇用への影響も懸念されるところである。一般に、企業は生産の動きに応じて、まず比較的調整しやすい残業時間等を変化させ、その後、雇用者数の調整を行うと考えられる。ここでは、製造業に着目し、生産と雇用関連指標(常用労働者数、所定外労働時間)の関係についてみていきたい。
  2. 各指標について、時系列の推移をみると、生産と所定外労働時間は景気に感応的であるが、常用労働者数はあまり景気の動きに連動していないようにみえる(図1)。
  3. しかしながら、前年比の推移を比較してみると、所定外労働時間は生産とほぼ同様の動きを示し、常用労働者数も生産から若干の遅れを伴って連動しているようにみえる(図2)。
  4. そこで、製造業中分類別にパネルデータを作成し、生産がどの程度のラグを伴って雇用関連指標に影響を及ぼしているのか実証分析を行った。その結果、所定外労働時間には当月から1,2ヶ月前の生産まである程度の幅を持って影響を及ぼしていた。常用労働者数については、影響はかなり小さいものの、約1年ほどのラグを持って生産が影響を及ぼし、また足下の生産も有意に影響を及ぼしていることが示唆された(付表)。
  5. 次に、当月と1ヶ月前の生産が所定外労働時間に及ぼす影響、当月と12ヶ月前の生産が常用労働者数に及ぼす影響に着目し、2002年から2005年と2006年以降の二期間に分けて試算を行った。その結果、06年以降では02−05年と比べて、所定外労働時間に対する生産の影響は小さくなる傾向にある。また、常用労働者数については、当月の生産の影響は06年以降の方が大きくなり、12ヶ月前の生産の影響はほぼ同程度となった(図3)。常用労働者数に対する当月の生産の影響の高まりは、近年において非正規雇用者の調整の影響が強まってきたことによるものと考えられる。また、12ヶ月前の生産の影響は近年やや薄れているものの、正規雇用者を中心とした雇用調整にはある程度のタイムラグが生じることを表していると考えられる。
  6. これらの動きは、企業の雇用調整方法が変化してきている可能性を示唆している。図3の所定外労働時間の係数が大きいことからも分かるとおり、企業の雇用調整は残業時間等の調整で行われることが一般的だが、近年では非正規雇用比率の上昇に伴い、足元においては非正規雇用を中心とした雇用者数による調整が行われやすくなっている可能性がある(図4)。こうしたことからも、今後の生産の動向と雇用の関係については引き続き注視していく必要がある。

【図1】製造業における生産と雇用関連指標の推移
【図2】製造業における生産と雇用関連指標の前年比の動向
【図3】生産に対する雇用関連指標の弾性値の変化
【図4】非正規雇用の動向
【付表】パネル分析の推計結果

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 遠坂 佳将 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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