今週の指標 No.884 目次   前へ   次へ 2008年06月30日

ユーロ圏:労働面からみた今回の景気回復

<ポイント>

  1. ユーロ圏では、2003年後半からの今回の景気回復局面において、雇用情勢が顕著に改善している。失業率は93年以来最低水準(7.1%(08年4月))にまで低下し、就業率は92年以来最高水準(66%(07年Q4))にまで高まっている。また、2000年代後半に入ると、前半よりも就業率上昇の勢いが増している(図1)。そこで、2000年代前半と後半で、成長率を資本投入、労働投入、TFP(全要素生産性)に分解すると、労働投入の寄与が大きく伸びており、労働投入をさらに分解すると(労働投入は労働時間と就業者数の寄与度に、就業者数は人口(15歳以上)と就業率の寄与度に分解できる)、労働時間はマイナス寄与、就業者数はプラス寄与、人口もややプラス寄与であるが、特に伸びているのは就業率で、2000年代後半に寄与度が増していることがわかる(図2)。

  2. 次に、就業者数(15-64歳)の変化をみると、2000年代を通じて労働参加率がおおむね上昇傾向にあったが、景気回復が着実になった06年以降、失業者数の減少により雇用率が高まったことも就業者数の増加に大きく寄与しており、労働参加→雇用への動きが確認できる(図3)。

  3. こうした雇用情勢の改善については、(1)景気回復による循環的要因だけでなく、(2)リスボン戦略(*1)による労働市場政策も影響している可能性があると言われている。そこで、欧州委員会の手法に基づき、就業率を従属変数として、2000年以降のリスボン戦略による労働市場政策の効果を、12か国6年分のパネルデータを用いて検証すると、前年の労働市場政策には有意に正の効果が確認でき、対称期間において、一定の役割を果たしてきた可能性が指摘できる(表4)。

  4. 最後に、2000年と07年の各国の状況を俯瞰する。図5では、横軸に労働参加率、縦軸に失業率をとり、図中で右下にシフトすれば、雇用の改善、就業率の上昇を示すが、既にオランダ、オーストリア、フィンランドの就業率はリスボン戦略の目標水準に達し(*2)、ポルトガル以外の全ての国で就業率が上昇している。また、各国のパフォーマンス格差も以前より縮小しており(就業率の標準偏差は5.77(00年)→4.91(07年))、ユーロ圏全体としておおむね改善方向に収斂してきたことがわかる(図5)。

  5. このように、今回の景気回復局面で雇用情勢は顕著に改善し、経済成長にも少なからず寄与してきたが、07年秋以降、域内の景気回復は緩やかになっており、足元では失業率がおおむね横ばいとなるなど、このところ雇用情勢の改善は足踏み状態にある。今後は更なる景気減速が予想され、一部の国では既に失業率が上昇し始めている中で、これまで一貫して改善してきたユーロ圏の労働市場も遠からず悪化に転じる可能性があり、先行きが注目される。


    (*1)リスボン戦略とは、2000年3月のリスボン欧州理事会(首脳協議)において、10年間の期間を念頭におき、EUの経済・社会政策についての包括的な方向性を示したもの。雇用に関しては、「フル就業(full employment)」の目標の下、2010年までにEU平均で70%の就業率(15-64歳)を目指すこと等が掲げられている。このリスボン戦略に基づき、若年者、女性、高齢者の労働参加の促進、税や給付によるインセンティブ阻害要因の見直し、求職者への就業支援等が行われてきた。
    (*2)ドイツの就業率は07年第4四半期に70%に達している。

図1 就業率と失業率の推移 図2 実質GDP成長率と各項目の寄与度 図3 就業者数の変化の要因分解 図4 パネル分析の結果(従属変数:就業率) 図5 各国の状況(2000-07年の変化) 備考

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 鈴木 一成 直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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