今週の指標 No.877 目次   前へ   次へ 2008年5月26日

銀行の貸出条件の変化と企業から見た貸出態度判断DIとの関係について

<ポイント>

  1. 日本銀行「全国企業短期経済観測調査(日銀短観)」の貸出態度判断DIや、国民生活金融公庫「全国小企業動向調査結果」の借入DIによると、金融機関の貸出態度は中小企業を中心にこのところやや厳格化の方向に推移していることがわかる(図1)。貸出態度の厳格化の要因としては、業績悪化により企業の信用リスクが高まったことや、サブプライムローン問題にはじまった証券市場の混乱を受け、金融機関がリスクの高い貸出に慎重になったことなどが考えられる。
  2. この背景を探るため、貸出態度の変化の影響を受けやすいと思われる中小企業に対する主要銀行の貸出条件の変化を、日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」でみると、4つの貸出条件のうち、「利鞘設定」(金利スプレッド。拡大すると貸出条件厳格化)、「借り手の信用リスク評価」(銀行の内部格付など。格付を下げると貸出条件厳格化)を中心に、このところ貸出条件の厳格化が進んでいることがわかった(図2)。
  3. ここで、貸出条件のなかで、企業側からみた指標である貸出態度判断DIに影響を与えてきたものが何かを調べるため、各貸出条件と貸出態度判断の相関をみてみると、特に「利鞘設定」および「借り手の信用リスク評価」について貸出態度判断DIとの相関が高いことがわかった(図3)。
  4. 「利鞘設定」と、企業から見た金融機関の貸出態度判断の相関が高い理由としては、金融機関がリスクに見合った金利を要求するなか、企業側が資金調達コストの上昇を意識しているからであり、当然の結果といえる。
    一方、「借り手の信用リスク評価」とは、銀行内の内部格付など本来は直接企業に知らされることのないものであるが、この変化が金融機関の貸出態度判断と相関が高い理由としては、スコアリング方式による貸出が一般化したことが考えられる。これは、金融庁が貸し渋り対策の一つとしてスコアリング方式を提唱した2003年の前後でデータ期間を分けた場合、後者のほうが傾きが急になることとも整合的であるといえる。スコアリング方式による審査の簡素化は審査のスピードアップに繋がるため、例えば格付が悪化して借入が断られる場合に、企業側が以前より簡単に断られたと判断するようになることから、格付の変化が貸出態度判断DIに大きく影響した可能性が指摘できる。

図1.日銀短観による貸出態度判断DIの推移
図2.中小企業に対する主要銀行の貸出条件の推移
図3.中小企業向けの貸出態度判断DIと貸出条件の散布図

(備考)
(図1)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)、国民生活金融公庫「全国小企業動向調査結果」より作成。日銀短観の貸出態度判断DIは、企業から見た金融機関の最近の貸出態度について、「緩い」と回答した割合−「厳しい」と回答した割合。「全国小企業動向調査結果」の借入DIは、企業から見た民間金融機関からの借入れについて、前期と比べて「容易になった」と回答した割合−「難しくなった」と回答した割合。
(図2)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」により作成。過去3ヶ月においてそれぞれの貸出条件をどのように変化させたかを表す。(「緩和」と回答した割合+「やや緩和」と回答した割合×0.5)−(「厳格化」と回答した割合+「やや厳格化」と回答した割合×0.5)。「信用枠」は貸出限度額のことであり、限度額を引き下げれば厳格化となる。「担保設定」は、担保をより必要とすれば厳格化となる。  
(図3)日銀短観、および日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」により作成。

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付  高橋 達郎  直通:03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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