今週の指標 No.874 目次   前へ   次へ 2008年4月28日

為替レートの企業収益への影響

<ポイント>

  1. 2008年3月半ば以降、円ドル名目為替レートは100円/ドル台前半で推移しており、輸出企業の採算円レート(105円/ドル)よりもやや円高水準にあり(第1図(1))、収益面への影響が現れつつある。採算円レートについて業種別にみると、化学、輸送用機器のように比較的円安となっている業種もあり、円高による収益への影響は業種間でばらつきがみられる(第1図(2))。さらに、資本金規模別にみると、大企業の中でも比較的資本金規模が小さい資本金10億円未満の企業は、採算円レートが、年明け以降の平均円ドル名目為替レートの105円/ドルを超える円安水準にあり、資本金規模が小さい企業の方が円高の影響を受けやすい状況にあることが分かる(同第1図(2))。

  2. このように、輸出企業が円高局面において収益に悪影響を受ける要因として、グローバル市場における海外メーカーを始めとしたライバル企業との価格競争の中で、円高による損失分を現地通貨ベースの輸出価格に転嫁しにくいとの事情が挙げられる。現地通貨ベースの輸出価格への転嫁の度合いの推移をみると、現地通貨ベースの輸出価格の為替弾性値は低下傾向にある(第2図)。これは、生産性の改善等がもたらしたものと考えられるが、そのスピードを上回るような急激な円高が進行した場合、収益への影響は無視できない。

  3. 円高は外貨建て輸出売上高の円建換算値を目減りさせ、円高の損失分を現地通貨ベースの輸出価格に転嫁しない限り、収益に悪影響を与える。しかし、一方で、円高で輸入価格が下落するというメリットもある。ここで、円高への耐久力を示すものとして採算円レート(自然対数値)と企業特性との関係をみると、「海外調達比率の引き上げ」や「円建輸出比率の引き上げ」を行っている企業が、円高への耐久力が高い傾向にあった(第3表)。まず、「海外調達比率の引き上げ」については、企業が海外に工場を建設することや、海外の企業を買収すること等を通じ、海外企業からの部品等の調達を増加させ、円高局面における輸入価格の下落によって収益への影響を相殺できるため、円高への耐久力につながっている。次に、「円建輸出比率の引き上げ」は、(備考)1.のように採算円レートを円高方向に動かす。円建輸出比率の引き上げは、為替の影響を受ける売上高の割合を減らすということであり、売上高の予見可能性を高めるメリットもある。

  4. 以上のように、輸出企業は、円高による差損を現地通貨ベースの輸出価格へ転嫁できず、このところの急激な円高は収益を圧迫していると考えられる。ただ、海外調達比率を高めている企業や、円建輸出比率を高めている企業においては、円高への耐久力が高いという傾向がみられ、リスク対応のためには、こうした取組が重要となる。

第1図 輸出企業の採算円レート
第2図 為替レート変動に対する現地通貨ベースの輸出価格の為替弾性値
第3表 円高への耐久力が高い企業の特性
備考

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 寺西 航佑 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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