今週の指標 No.871 目次   前へ   次へ 2008年4月7日

レアメタルの高騰は消費者物価を押し上げているか

<ポイント>

  1. 2月の全国消費者物価指数(生鮮食品除く(コア))は石油製品や食料品の押上げ寄与により前年比1.0%と10年振りの高い伸び率となった(図1)。石油製品や食料品価格の上昇は、それぞれ原油高、穀物高を背景としており、国際的な市況の上昇によるものである。そこで、原油や穀物と同様に市況が高騰しているレアメタル(注1)は消費者物価を押上げているのだろうか。

  2. 我が国におけるレアメタルの輸入単価と輸入量を貿易統計からみると、レアメタルの輸入単価は総じて高騰しており、需要量も増加していることがわかる(図2)。輸入単価は、03年と比べ多くのレアメタルで2〜3倍近く上昇している。また、輸入量についても1.2〜1.5倍程度増加するなどレアメタル需要が高まっていることが示唆される。

  3. 具体的なレアメタルの用途としては、特殊鋼や排ガス浄化装置として自動車産業に、液晶パネルの部品や充電電池としてパソコン、携帯電話、液晶テレビなどのIT関連産業において使用されている(図3)。

  4. そこで、消費者物価(CPI)の中から自動車、IT関連などレアメタルを使用している最終製品を抽出して、「レアメタル関連CPI」を作成してみると、前年比マイナス幅は縮小傾向で推移しているが、レアメタルの上昇とは裏腹に前年比でマイナスが続いていることがわかる(図4)(注2)。「レアメタル関連CPI」の前年比がマイナスとなっている要因としては、(1)IT関連産業の製品は、メーカー段階、小売り段階と流通の各段階で価格競争が激しいため、価格が下落しやすい、(2)技術進歩のペースが速く物価の品質調整の影響を受けることが考えられる。また、レアメタルの高騰が「レアメタル関連CPI」に対する押上げ圧力としてあまり作用していない理由としては、(1)製品への投入量がわずかである(注3)、(2)レアメタルが製品となるまでには、多くのプロセスが存在するため、各プロセスで価格上昇を吸収していることが考えられる。一方、これらの条件を満たさない製品(製品への投入量が多く、単純な加工のみで製品となる)である指輪(プラチナ製)、浴槽(ステンレス製)などは物価の押上げに寄与している。

  5. レアメタルは「産業のビタミン」と呼ばれており、量はわずかではあるが産業にとって欠かすことのできない金属である。現在、レアメタルが消費者物価を押上げる力は弱いが、今後、さらなる需給のタイト化、価格の高騰等により供給が不足すれば、レアメタル関連財の供給がタイトになり物価上昇という経路もあり得るので、物価の先行きをみる上でレアメタルの需給状況や価格には注視する必要がある。

    (注1) レアメタルとは、存在量が希である資源、多く存在するが単体として取り出すことが技術的に困難である資源、または採掘や精錬のコストが高く経済的に採算が取れない資源を指す。経済産業省では、31鉱種をレアメタルに指定している。
    (注2) CPIは、固定基準ラスパイレス指数算式により算出されているため、商品の指数水準 が大幅に低下(上昇)した場合、同商品の価格変動が総平均指数に与える影響度が低下(上昇)するというバイアスがあり、レアメタル関連CPIの前年比マイナス幅が縮小しているのは、その影響もあることに注意が必要(日本銀行「日銀レビュー 連鎖方式による国内企業物価指数」参照)。
    (注3) 産業連関表から、非鉄金属の投入係数をみてみると、例えば、乗用車では、0.003とわずかであり、さらに非鉄金属には銅やアルミなどが含まれていることから、レアメタルが占める割合は極めて小さいと推察される。

消費者物価(コア)の寄与度分解
主なレアメタルの価格と輸入量の変化(03年→07年)
主なレアメタルの用途
レアメタル関連CPIの推移と寄与度分解

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 荒井 秀朗 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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