今週の指標 No.860 目次   前へ  次へ 2008年2月18日

中国:インフレ懸念の強まる中国経済

<ポイント>

  1. 中国国家統計局が1月24日に発表した07年の中国の国内総生産(GDP)は前年比11.4%の伸びとなり、5年連続で10%を上回る成長率となった。一方、07年の消費者物価上昇率は前年比4.8%増となり、06年の同1.5%から大きく伸びが加速した。これまで低めの物価上昇率で高成長を続けてきた中国経済に変化が見られる(図1)。

  2. 07年における消費者物価上昇率は、食品価格の上昇等から3月に政府目標の3%を超えた後、8月以降は6%台で推移し、11月には前年比6.9%と過去10年で最高の伸びを記録するなど大きく上昇した(図2)。食品価格上昇の背景としては、疫病や飼料価格の上昇に伴い豚肉価格が高騰したことや食用油などの国際商品価格が高騰したことなどが挙げられる(図3)。

  3. 食品価格の上昇等がより広範な期待インフレにつながることへの懸念が強まるなか、中国人民銀行は金融政策を引き締め方向にシフトさせており(※1)、07年1月以降は、貸出及び預金基準金利を計6回、それぞれ合計1.35%と1.62%ポイントずつ引き上げ、預金準備率は計11回、合計5.5%ポイント引き上げている(図4)。また、同行の「第3四半期貨幣政策執行報告(07年11月8日)」では、為替政策についてもこうした金利政策と協調的に運営することでインフレ抑制を行うとの趣旨が記載されている。実際、足元では人民元の対米ドルレートが08年初比で約1.5%増価するなど、増価ペースが加速しており、輸入物価の抑制に一定の寄与が期待できると考えられる(図5)。併せて、中国政府は、08年1月15日に臨時価格関与措置(※2)を導入するなど、行政手段による物価抑制策を打ち出している。

  4. 今後の物価動向を展望すると、消費者物価上昇の主要因であった食品価格の上昇については、中国政府のインフレ抑制策(農産品の生産拡大や穀物の輸出規制及び輸入拡大の措置等)の効果が今後一部に顕在化してくることが考えられる。一方、最低賃金の引上げや労働需給の引締りによる賃金上昇の加速(図6)に加え、労働契約法(※3)の施行(08年1月1日)が労働コストを上昇させる可能性があると考えられ、こうした賃金サイドからの物価上昇圧力も含め、引き続き中国の物価動向を注視していく必要があろう。

    (※1)08年の経済政策の基本方針を決定する中央経済工作会議(07年12月3日開催)では、インフレ抑制が経済の過熱防止と並んでマクロコントロールの最優先課題に位置づけられ、金融政策については、従来の「穏健な金融政策」から「引き締めの金融政策」に政策スタンスが改められた。
    (※2)食料品や燃料等7品目の重要商品を対象に、一定規模以上の生産業・加工業者が出荷価格を引き上げる場合、政府への申告が必要となる。また、一定規模以上の小売・卸売り業者が販売価格の引き上げを行う場合、政府への届出が必要となる。政府は、申告については7業務日以内、届出については3業務日以内に告知をしなければならず、期限を過ぎても告知のない場合は、申告等に異議がないものとみなされる。
    (※3)一定の条件の下での無固定期限労働契約(使用者と労働者が契約の終了時期を約定していない労働契約)の義務付けや、労働契約の解除及び終了に伴う経済補償(退職金)規定の明確化等、労働者の権利保護を強化する内容となっている。ただし、一面で企業の労働コスト上昇につながる可能性があると指摘されてきている。

図1 中国の実質GDP成長率と消費者物価上昇率の推移 図2 消費者物価上昇率と項目別寄与度 図3 品目別食品価格の推移 図4 預金準備率、預貸金基準金利の推移 図5 人民元レートの推移 図6 中国都市部の平均賃金と上昇率
(備考)
中国国家統計局、中国人民銀行、CEICデータ等より作成。

担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
 前田 篤紀 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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