今週の指標 No.858 目次   前へ   次へ 2008年2月4日

アメリカ:深刻化、長期化する住宅部門の調整

<ポイント>

  1. アメリカ商務省が1月30日に発表した07年10−12月期のGDP(速報値)における住宅投資は、前期比年率23.9%の減少となった。住宅投資は06年1-3月期以降8四半期連続の減少となっている(図1)。アメリカの住宅市場は2000年代に入りかつてないブームを迎えたが、04年7月以降の政策金利の引上げ等の影響による住宅金利の上昇や、住宅価格が高水準となったことなどにより、新築、中古を合わせた販売件数でみると05年半ばをピークに住宅需要は減少し始め、調整が続いている。07年12月の住宅販売件数は新築が前年比40.7%減少の年率60.4万件、中古が同22%減少の年率489万件と低迷している。その結果、在庫/販売比率も足もと07年12月で新築、中古ともに9.6か月分と高い水準まで積み上がっている(図2)。
  2. こうした住宅市場の低迷は住宅価格に対して下押し圧力となっている。ケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)をみると、06年8月以降下落に転じており、07年11月は前年比7.7%減と大きく減少している。また、連邦住宅企業監督局(OFHEO)の住宅価格指数(7-9月期)も前年比では依然上昇(1.8%の上昇)しているものの、前期比では0.4%低下と約13年ぶりに下落した(図3)。他方、こうした住宅価格の下落は、長期金利(10年物国債利回り)に伴って低下している住宅ローン金利の動向とあいまって(図4)、住宅取得可能指数(Housing Affordability Index)(注1)の改善に寄与している(図5)。
  3. こうしたことを背景に、07年に入ってから購入用住宅ローン申請指数はやや持ち直しているものの、その動きと実際の住宅販売件数の動きには乖離が目立っている(図6)。その原因として、サブプライム住宅ローン(注2)の延滞率の上昇(図7)や金融機関における損失拡大等の影響によって、金融機関の融資基準が厳格化したことが考えられる。連邦準備制度理事会(FRB)の調査によると、銀行の住宅ローンの融資基準は、足もとではサブプライムローンだけではなくプライムローンにまで厳格化の動きが波及していることが分かる(図8)。
  4. 住宅部門の調整が進み住宅建設の落ち込みに歯止めがかかるためには、住宅販売の下げ止まり、在庫調整の進展が必要となる。そのためには、サブプライム住宅ローンの延滞・差押さえ率の上昇がおさまり、融資基準厳格化の動きが緩和されることが重要であると考えられる。こうした観点から、返済金利凍結(注3)等のアメリカ政府のサブプライム住宅ローン対策の効果やFRBの金融緩和の効果が住宅部門の調整にどのように影響してくるか、アメリカの金融機関におけるサブプライムローン関連の損失処理の動向などが注目される。

    (注)1.住宅取得可能指数(Housing Affordability Index)は、中位所得家計が中位価格の住宅資産を購入するために住宅ローンを組むにあたり、頭金を20%と仮定し、月々の元利支払いを収入で割って、25%の場合を100として指数化したもの。低下するほど住宅の入手が困難であることを示す。
      2.サブプライム住宅ローンの定義は各社によって異なるが、信用力の比較的低い債務者向けの住宅ローンであり、04年以降急速に広まった。またサブプライムローンの大半は固定金利と変動金利を組み合わせたハイブリッドARM(adjustable-rate mortgages)と呼ばれる変動金利型のものが占めており、当初2、3年の金利を5〜6%程度の低水準に固定し、残りの年数は10%超の金利へと変動するようなものが多いとされている。これに対し、相対的に信用力の高い層向けの住宅ローンはプライムローンと呼ばれる。
      3.ハイブリッドARM型サブプライム住宅ローンの借手で、貸出当初の金利では返済し続けているが、既存の仕組みでは借換えができない者のうち、一定の要件を満たす借手に対しては、貸出当初の固定金利を予定されていた金利変更時期から5年間、金利変更を凍結するもの。アメリカ政府の呼びかけの下で設立された民間グループ「HOPE NOW」による自主的な措置であり、納税者の負担や政府の強制を伴うものではないと説明している。

図1 実質GDP成長率(前期比年率) 図2 住宅在庫/販売比率
図3 住宅価格の推移 図4 アメリカ長期金利と住宅ローン金利の推移
図5 住宅取得可能指数の推移 図6 住宅販売と購入用住宅ローン申請指数の推移
図7 住宅ローン延滞率 図8 銀行の住宅ローン融資基準

担当:参事官(海外担当)付 松本 洋平 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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