今週の指標 No.852 目次   前へ   次へ 2007年12月17日

ドイツ:増加基調が維持されるのか注目される機械設備投資

<ポイント>

  1. ドイツでは、企業部門を中心に景気は回復している。機械設備投資は、四半期ごとの振れはあるものの、2003年にGDPに対してプラス寄与となって以降、年々寄与を拡大させ、07年もプラス寄与が拡大すると見込まれる(図1)。欧州委員会の07年春の見通しでは、企業の機械設備投資が力強さを維持している背景として、(1)過去の余剰設備の廃棄、(2)生産設備のひっ迫の持続、(3)企業利益の増加、(4)加速的な減価償却制度の導入という4点を挙げている。
  2. この点を具体的にみると、まず(1)と(2)については、ドイツ企業は90年代末〜2000年代初頭のITブーム期に設備過剰に陥り、ITバブル崩壊後に余剰設備の廃棄を進めてきた。一方、ITバブル崩壊を機に減速していた世界経済が回復する過程で、新興国を中心にドイツ製品への需要が高まった。この結果、07年初までは生産設備のひっ迫感が強まってきていた(図2)。次に(3)については、景気回復とともに営業余剰が拡大を続けている(図3)。ちなみに、DAX採用30銘柄のうち03年から時系列で比較できる21銘柄の06年度のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)は03年度に比べて17.6%の増加となった。この結果、ドイツ連邦銀行も指摘しているように、ドイツの非金融企業の固定投資の原資は内部留保が中心となっており(図4)(注1)、05年12月以降の欧州中央銀行の段階的な利上げの影響は相対的に小さくなっていると考えられる。最後に(4)については、投資の促進を目的として、06年1月1日以降07年12月31日までに取得された不動産を除く固定資産について、定率法による減価償却の幅を拡大する措置(注2)がとられてきた。
  3. ただし足元では、07年4-6月期及び7-9月期の機械設備投資はそれぞれ前期比年率3.6%増と同1.5%増となり、伸びが緩やかになっている。先行きについても、ドイツ政府や国際機関の07年秋の見通しでは、08年の機械設備投資について、07年と比べ増勢が鈍化するとしている(ドイツ政府:07年前年比11.1%増→08年同6.0%増、欧州委員会:07年前年比10.5%増→08年同3.8%増)。この背景としては、世界経済の減速と金融資本市場の変動による不透明感の高まりが挙げられる。まず、実体経済の先行きについては、08年のヨーロッパ経済は減速が見込まれている(07年秋の欧州委員会のEU27に対する経済成長率見通し:07年前年比2.9%→08年同2.4%)。主要4業種に対するIFO景況感指数をみても、現状を示す景況感が相対的に高水準で推移する一方、今後6ヶ月を示す景況感は07年6月以降下落を続けている(図5)。また、設備稼働率や企業利益は引き続き高水準を維持し、国内企業や中小企業へ投資のすそ野が広がりつつあるものの、生産活動に関するサーベイでの設備不足を指摘する回答も、07年10-12月期は若干低下している(図2)。このほか、加速的な減価償却制度が07年末に終了することも、機械設備投資に影響すると考えられる。
  4. 次に、金融資本市場の動向をみると、07年8月にアメリカのサブプライム住宅ローンの証券化商品に投資していたドイツ産業銀行やザクセン州立銀行が、傘下のファンドの資金繰りが困難になったことによって、政府系公庫による救済や銀行団からの信用枠供与を受けるなど、ヨーロッパの金融機関においてもサブプライム住宅ローン問題に関連した損失が発生している。このため、ヨーロッパにおいても信用収縮が進行し、ユーロ圏の銀行は貸出基準を厳格化しており、特に機械設備投資に影響の大きい大企業向けや長期貸出に対する基準が厳しくなっている(図6)。このように、実体経済及び金融資本市場の先行きについて不透明感が高まる中で、企業の投資意欲が今後減退する可能性があり、08年以降に機械設備投資の増加基調がどの程度維持されるのか注目される。

    (注1)ドイツ連邦銀行の非金融企業の貯蓄投資バランス統計では、投資は固定投資と金融投資、資金調達は内部調達と外部調達に分けられるが、固定投資に要する資金をどの程度外部または内部調達としているかは示されていない。ここでは、時系列の変化をみるために、固定投資はまず内部調達によって行われ、内部調達のみでは固定投資額に達しない場合に、その差額が外部調達により行われたとみなす簡便法により計算した。ただし実際には、個々の企業や投資によって調達手段は異なっているため、図4では、外部調達による固定投資額が過少に計算されていると考えられる。なお、ここでは統計誤差は考慮していない。

    (注2)定率法による減価償却の上限が取得価額の30%または定額法による償却金額の3倍に拡大された(従来の上限は取得価額の20%または定額法による償却金額の2倍)。

図1 実質GDP 図2 製造業設備稼働率と生産活動に関するサーベイ
図3 営業余剰とEBITDA 図4 非金融企業の固定投資に対する資金調達(一定の前提の下での試算)
図5 企業景況感 図6 ユーロ圏の銀行の貸出基準

(備考)
欧州委員会、ドイツ連邦銀行、ドイツ商工会議所、IFO研究所、ZEW研究所、財務省、Bloombergより作成。

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 山本 知範 直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ   次へ