今週の指標 No.844 目次   前へ   次へ 2007年11月12日

原油価格高騰の背景をどうみるか

<ポイント>

  1. 原油価格の指標としてアメリカのWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)先物価格の動きをみると、近年では、ドライブシーズンにおけるガソリン需要増等を反映して夏場に上昇した後、9月頃になると落ち着くという季節変動がみられたが、2007年は9月以降も上昇傾向が続いている(図1)。7月31日に1バレル78.21ドル(終値)と過去最高値を更新した後、サブプライム住宅ローン問題等によるアメリカ経済の減速懸念により一旦下落したものの、8月下旬からは再度上昇に転じた。その後も上昇を続け、10月中下旬には90ドルを超えるなど、再び過去最高水準を更新し、足元では90ドル台半ばで推移している。

  2. 図1にみられるように、原油価格は、97-00年平均で20ドル前後で推移していたが、2000年代に入ってからは01-04年平均で30ドル前後、05年平均で56.7ドルと急速に上昇してきた。この背景として、新興国の経済成長や世界的な景気回復に伴う需要拡大、余剰生産能力の低下や投機的資金の流入などがあると指摘されている。さらに、足元の原油価格の一段の上昇の背景としては、(1)アメリカの原油在庫の減少や需要期を目前に暖房油在庫が例年と比べて低水準に留まっていることによる需給ひっ迫感の高まり(図2、図3)、(2)サブプライム住宅ローン関連の金融商品からの投機的資金の流出(図4)、(3)ドル安の進展による海外投資家からみた割安感の高まり(図4)、(4)中東情勢等を取りまく地政学リスクの高まりなどが指摘されてきており、こうした状況の下で投機的資金が更に流入しているものと考えられる(図5)。

  3. アメリカの物価動向をみると、コアPCE(個人消費支出)デフレーターやコアCPI(消費者物価指数)指数の上昇率は落ち着いており、今のところ、原油価格上昇のコア物価への波及は明確な形ではみられていない(図6)。投機的な資金の動きが一時的なものに留まれば近年の季節的パターンのように下落していく可能性があると考えられるが、一方で市場の期待を表す指標の一つである原油価格の先物カーブ(図7)をみると、限月の長い(受け取り期日までの期間が長い)部分も含めて上方にシフトしており、高止まりが続く可能性もあることが示唆されている。10月31日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明において、「最近のエネルギー価格と商品価格の上昇がその他の要因とともに、新たなインフレ上昇圧力となる可能性がある」と指摘されているように、原油価格の高止まりや更なる上昇が続けば、物価上昇圧力などにつながりアメリカのみならず世界経済全体に悪影響を及ぼすことが懸念されるため、今後の原油価格の動向を慎重に見守っていく必要がある。


    (注1)「ドライブシーズン」とは、アメリカにおいては5月末のメモリアルデーから9月上旬のレイバーデーまでの期間である。
    (注2)「コア物価」とは、価格変動が大きいエネルギーと食料を除いた物価である。

図1 アメリカ の原油価格の動き 図2 アメリカ の原油在庫の動き 図3 アメリカの暖房油在庫の動き 図4 ABCPの発行高とドル実効為替レートの推移
図5 投機筋が保有する建玉数とシェアの推移
図6 アメリカの物価指数の動向 図7 原油価格(WTI)の先物カーブ
(備考)
米国商務省、労働省、エネルギー省、FRB(連邦準備制度理事会)、CFTC、ブルームバーグより作成。

担当:参事官(海外担当)付 丸山 一郎 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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