今週の指標 No.838 目次   前へ  次へ 2007年10月15日

アメリカ:住宅市場の調整と個人消費の動向

<ポイント>

  1. アメリカでは住宅市場の調整が続いている。住宅着工件数をみると、2005年には207.3万件に達したが、06年に入ってからは減少傾向となり、07年8月には12年ぶりの水準となる年率133万1000戸まで低下した。在庫販売比率(注1)をみると、新築、中古ともに住宅販売が減少し始めた06年以降急速に上昇して高い水準(07年8月:新築8.2ヵ月、中古10.0ヵ月)となっており、足元でもピークアウトする兆しもみられないことから、住宅投資の回復にはしばらく時間がかかるものと考えられる(図1)。住宅市場の調整の長期化は、住宅投資への直接的な影響に加え、他の部門にもマイナスの影響を及ぼして景気全体をさらに減速させる可能性がある。特に、個人消費については、これまでの住宅価格の上昇に伴う資産効果が家計の消費拡大を支えてきた面もあるとみられていることから、今後、その効果が剥落することの影響が懸念される。

  2. これまで、家計は住宅価格の上昇に伴い増加した住宅資産価値と住宅ローン残高の差額を現金化することで資金調達を行い、その一部を消費に充てたとみられている。具体的な資金調達の手段としては、(1)住宅の現在評価額から住宅ローン残高を差し引いた純資産額を担保に借入を行う方法(ホーム・エクイティ・ローン)、(2)既存の住宅ローンを別の住宅ローンに借り換える際に、住宅資産価値の上昇分に見合う分まで借入額を増やす方法(キャッシュアウト・リファイナンス)、(3)住宅資産の売却によって住宅ローン借入残高返済後の余剰資金を得る方法がある。

  3. このうち、ホーム・エクイティ・ローン残高の増減をみると、住宅価格が急上昇した2003年末から05年前半にかけて大幅に増加し、住宅価格の上昇率が低下し始めた06年も比較的高い増加幅を維持したが、07年に入ってからはその伸びは低下している(図2)。また、住宅ローンにかかるキャッシュアウト・リファイナンスの額をみると、05〜06年にかけて急増し、07年もこれまでのところ比較的高い水準にあるが、現在の住宅市場の沈静化を考え合わせると06年4−6月期がピークであった可能性があり、統計を公表している連邦住宅貸付抵当公社(フレディ・マック)は、07年下半期以降キャッシュアウト額は減少すると予測している(図3)。

  4. 個人消費の動向をみると、雇用・所得環境が比較的堅調であることから、実質個人消費支出は前年比で3%前後と安定した増加テンポで推移しており(図4)、住宅資産からの資金調達の鈍化の影響は今のところ明確にはみられない。家計の債務残高は、住宅市場の過熱が加速した2000年代以降、住宅ローン債務が急増したことから、可処分所得を大きく上回る水準に達しているが(図5)、バランスシートでみれば、純資産額(資産額−負債残高)自体は可処分所得比率をみても、02年以降足元まで上昇傾向が続いている(図6)。こうしたことが家計の債務負担感を軽減し、消費意欲を支えていることも考えられる。

  5. しかしながら、純住宅資産額(住宅資産額−住宅ローン債務残高)の可処分所得比率をみると、2006年後半以降低下している(図6)。これまでのところ、金融資産の増加により、金融資産を含めた家計純資産の可処分所得率は緩やかに上昇しているが、今後、住宅市場の調整が進む中で住宅価格が急落するようなことになれば、さらなる純住宅資産額の低下から、家計純資産の減少を招くおそれがある。加えて、家計の元利返済負担及び金融負担(注2)の可処分所得比率をみると、過去最高水準まで上昇している(図7)。このため、今後、住宅市場の調整の進展に伴い、家計は住宅からの資産効果の剥落や債務返済負担の増加から消費を抑制する可能性もあり、個人消費の先行きには注視が必要である。

    (注1)「在庫販売比率」とは、住宅が追加供給されないと仮定した場合に、現在の住宅販売に対して何か月分の住宅在庫があるかを示す指標である。
    (注2)「金融負担」とは、元利返済負担(住宅ローン、自動車ローン等)に家賃、住宅保険、固定資産税等を加えたものである。

図1 住宅着工件数と在庫販売比率の推移 図2 ホーム・エクイティ・ローン残高の増減(前年差)の推移
図3 住宅ローンにかかるキャッシュアウト・リファイナンス額の推移 図4 実質個人消費、実質可処分所得、個人貯蓄率の推移
図5 債務(可処分所得比)の推移 図6 家計の純資産(可処分所得比)の推移
図7 家計の元利返済負担(可処分所得比)等の推移

(備考)
アメリカ商務省、連邦準備制度理事会(FRB)、全米不動産協会(NAR)、アメリカ連邦住宅貸付機関監督局(OFHEO)、アメリカ連邦住宅貸付抵当公社(Freddie Mac)より作成。

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 大塚 昌明 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ  次へ