今週の指標 No.836 目次   前へ  次へ 2007年10月9日

我が国のサービス貿易における比較優位構造

<ポイント>

  1. 経済のサービス化や企業活動のグローバル化は、国境を越えたサービスの取引の増大、つまりサービス貿易の活発化をもたらしている。IMF“Balance of Payments”によれば、世界のサービス・財輸出額の2001〜05年にかけての年平均増加率は、サービス輸出額が+10.4%、財輸出額が+10.2%となっている。このように世界的には、サービス貿易は財貿易と同等の高い伸びで拡大を続けている。

  2. 我が国のサービス貿易についてみると、サービス収支の赤字幅は縮小傾向をたどっている(97年542億ドルの赤字→06年183億ドルの赤字)。これは、経済のサービス化による影響が反映される「その他サービス」(注1)の輸出超過(グロスの輸出額は06年で712億ドル、ネットの黒字は同53億ドル)によるところが大きいといえる(第1図)。「その他サービス」収支の内訳では、「情報」、「通信」といった分野で収支が赤字となっているものの、「特許等使用料」、「建設」、「金融」、「その他営利業務」において収支が黒字となっており、「その他サービス」収支全体は05年以降黒字に転換している(第2図)。しかし、依然、我が国のサービス輸出全体の規模は、06年で1,173億ドル(名目GDP比2.7%)と、アメリカの4,188億ドル(同3.2%)に比較して小さい。また、サービス輸出額の財輸出額に対する比率は19.0%と、G7の中では第5位にとどまっている(第3図)。
    (注1) 内訳は、「金融」、「情報」、「通信」、「建設」、「特許等使用料」、「その他営利業務」、「保険」、「文化・興行」、「公的その他サービス」がある。

  3. サービス貿易拡大の牽引役となっている「その他サービス」について、顕示比較優位指数(注2)の日米英比較を行ったところ(第4図)、日本は「特許等使用料」、「建設」で比較優位を有する一方で、「金融」、「情報」、「通信」等では比較優位が低い。これは、我が国のサービス産業における生産性の高低が影響している可能性がある。そこで労働生産性の水準について、「建設」、「金融」、「情報」、「通信」、「その他営利業務」(注3)の日米英比較を行ってみた(第5図)。その結果、サービス貿易において我が国の優位性の高い「建設」では、米英と比肩するレベルにあるものの、「情報」、「通信」、「その他営利業務」といった優位性の低い分野では、生産性も相対的に低かった。ただし、収支が黒字となっている「金融」においては、過去海外業務を縮小してきたこと等が影響している可能性もあって、生産性では米英と大差ないものの、サービス貿易における優位性が低い結果になった。
    (注2) 貿易における項目別の比較優位を示す指標。詳細は、文末(備考)2を参照。
    (注3)  IMF“Balance of Payments”における「その他営利業務」は、大きく(1)「仲介貿易・その他貿易関連サービス」、(2)「オペレーショナル・リースサービス」、そして(3)「その他業務・専門・技術サービス」に分かれている。ここでのEU KLEMSデータベースにおける「その他営利業務」は、法務・経理関連サービス等が該当し、上記(3)に近い。


  4. 以上のように、サービス貿易において、我が国は他の先進国と比較して、「金融」、「情報」、「通信」といった今後、世界で大きな発展が見込まれる分野において、比較優位に乏しいといえる。我が国では、サービス産業の生産性向上が重要な課題となっているが、その実現を図ることで、サービス貿易の拡大にもつながっていくものと考えられる。

第1図 我が国のサービス貿易収支
第2図 我が国の「その他サービス」貿易収支
第3図 主要国のサービス・財輸出額(2006年)
第4図 財及び「その他サービス」における顕示有意比較指数(日米英比較)(2006年)
第5図 産業別労働生産性水準(日米英比較)(2000−04年の平均)
備考

担当:参事官(経済財政分析担当−総括担当)付

   寺西航佑  直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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