今週の指標 No.834 目次   前へ   次へ 2007年10月1日

所得再分配調査と全国消費実態調査のジニ係数の違いについて

<ポイント>

  1. 8月24日に厚生労働省から「平成17年所得再分配調査」が公表された。この調査は、近年話題となっている所得格差の分析に利用される調査である。この調査で公表されているジニ係数(※1)を、同じく格差分析に利用される総務省「全国消費実態調査」と比較すると、所得再分配調査のジニ係数の方が高く出ていることがわかる(図1)。
  2. これらの調査においては、計算の基準としている所得が税金・社会保険料等を含んでいるかどうかの違いがある(図2)。ただし、一般的には、税金等の再分配を行った場合にはジニ係数は低下する(表1)。
  3. 所得再分配調査のジニ係数が高く出ている理由として、調査対象の違いや調査世帯数の違いなどが考えられるが(表2)、それ以外にも、各調査の世帯主の年齢別分布の違いが考えられる。すなわち、全数調査である国勢調査を基準として所得再分配調査と全国消費実態調査をみてみると(図3)、所得再分配調査は若年層において世帯主割合がより低く、高齢者層においてより高いことがわかる。ジニ係数は高齢者世帯ほど高くなる傾向があるため(図4)、高齢者層の世帯主割合がより高い所得再分配調査のジニ係数はより高くなると考えられる(※2)。
  4. 全国消費実態調査と比べて、所得再分配調査の方が国勢調査の世帯分布との乖離が大きい理由は、厚生労働省「国民生活基礎調査」の所得票調査世帯を調査世帯の基にしていることが影響していると思われる。すなわち、国民生活基礎調査の所得票調査世帯は国勢調査と比べ、若年層の割合が低く、高齢者層の割合が高くなっている(図5)。これは、特に若年層において、個人情報保護意識の高まり等の影響が出ているためと考えられる。このため、同じ調査対象に対して調査している所得再分配調査も、同じ傾向を示しているとみられる。さらに、高齢者の割合が高い傾向については、所得票が福祉事務所経由で調査されることで高齢者の回収率が上昇する影響も指摘されている(※3)
  5. 所得格差の動向を表すジニ係数を評価するにあたっては、以上のような調査ごとの特性の違いに注意する必要があると思われる。


    (※1)0〜1の値をとり、完全に平等であれば0になる。1に近づくにつれて格差が大きいことを示す。
    (※2)ただし、これら世帯分布の違いについては、世帯主の定義の違いによる違いもあると思われる。(表2)。
    (※3)『国民生活基礎調査においては所得票が福祉事務所経由で調査されることもあって、高齢者単独世帯を多く含む高齢者低所得世帯の回収率は良好で、結果として低所得世帯は所得分布に過大なウエイトを持つこととなる。』舟岡史雄(2001)「日本の所得格差についての検討」一橋大学経済研究所経済研究第52巻

図1 所得再分配調査と全国消費実態調査のジニ係数 図2 ジニ係数計算の際に使用した所得の違いについて
表1 税金等による所得再分配効果 表2 各調査の調査項目の違い
図3 世帯主年齢別の世帯数分布
図4 世帯主年齢階級別のジニ係数
図5 国民生活基礎調査における年齢別の世帯主割合

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 佐藤 有平 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ   次へ