今週の指標 No.833 目次   前へ  次へ 2007年9月25日

所得・マインドと消費の関係の変化

<ポイント>

  1. 消費は90年代前半に比べると所得の変動に対してあまり敏感に反応しなくなってきている。消費の所得弾力性を推計すると、90年代に比べ足下では半分程度となっている(図1左図)。一方、消費のマインドに対する弾力性は所得弾力性に比べると低いものの、90年代と比べると足下では高水準となってきている(図1右図)。このような弾力性の変化は消費者をとりまく外部環境の変化や消費内部の変化によりもたらされると考えられる。以下では後者に注目してその要因を探る。

  2. 所得、マインドに対する弾力性の変化は、弾力性の高い消費支出のシェアの変化が一因と考えられる。そこでまず費目ごとに所得やマインドに対する弾力性をみたものが図2である。これによれば、所得弾力性が1より大きい選択的支出に類する費目はマインドに対しても高い弾力性がある一方、所得弾力性が1より小さい基礎的支出はマインドに対する弾力性が小さいことがわかる。したがって、所得やマインドの変化に敏感なのは図2の第一象限にある費目といえる 。

  3. そこで第一象限にある費目の消費全体に占めるシェアを時系列で見ると、(1)90年代は徐々に水準を低下させたことと、(2)景気回復局面に上昇し、後退局面に低下していることがわかる(図3左図)(注1)。(1)については、高齢化等で所得やマインドに対し非弾力的な医療費の支出増、趨勢的な帰属家賃の増加等によるものとみられる。(2)については、景気循環に応じて所得やマインドが変動すると、それらに対して弾力的な消費支出が変動しやすいためと考えられる。

  4. 図1でみられた消費の所得弾力性の低下は、弾力的な費目のシェアの低下によるものとみられる。一方、マインドに対する弾力性の上昇は、所得弾力性はそれほど大きくないもののマインドに対する弾力性の高い費目(娯楽・レジャー・文化など)のシェアが2000年頃から急速に上昇しているためとみられる (図3右図)。また、足下のように、景気回復局面が長期化している中では構造的低下((1))よりも循環的上昇((2))が強く出ており、シェアの上昇が見られる。これは今後、所得と消費の関係が復元する可能性を示唆しており、雇用情勢の改善を受けて所得の伸びが改善すれば、それが消費の増加につながりやすくなるものと期待される。

  5. 一方、足下で消費者マインド(消費者態度指数)は、弱含みで推移している。その背景として、特に6月以降の悪化については、税源移譲(注2)やこのところのガソリンの高騰などのように、マインドだけでなく可処分所得やその購買力に直接影響をもたらす事柄の影響が指摘されている。さらに、足下の株価の下落は家計金融資産の減少による消費への影響の他、株式を保有していない世帯のマインドに対しても、間接的に影響を及ぼす可能性がある(図4)。消費に影響を与える要因は様々あるものの、消費とマインドの相関が生じつつある中では、株価の動向などマインドに影響する事柄には引き続き注視が必要である。

    (注1)なお、ここでの費目は大きな分類となっているため、所得やマインドに弾力的とされていない費目の中にも個別に見れば弾力的であるものも含まれる(例えば通信のうち移動電話通信料)。そこで、家計調査で分類されている選択的支出がマクロでどれだけのシェアがあるかを見たのが付図である。これによれば06年度のマクロ消費に占める選択的支出(使途不明金除く)の割合は47%程度であり、より細かく分類した場合は図3左図の水準は全体的にもう少し高いと見られる。

    (注2)消費者態度指数に限らず、様々な調査においてこのところ消費者マインドが悪化している。その理由として多くの調査で回答者が定率減税廃止・税源移譲、およびガソリン高騰を挙げている。



図1 消費の所得・消費者マインドに対する弾力性の推移
図2 消費の所得とマインドに対する弾力性の傾向
図3 所得・マインドに弾力的な費目の消費全体に占めるシェア
図4 消費者態度指数と株価の動き
付図 消費形態ごとの基礎的・選択的支出割合

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 渡辺 浩志 直通:03-3581-9516

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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