今週の指標 No.830 目次   前へ  次へ 2007年9月10日

アメリカ:景気減速により、貿易赤字はおおむね横ばいで推移

<ポイント>

  1. 8月30日に発表された2007年4-6月期の実質GDP成長率(暫定値)は前期比年率4.0%増となり(図1)、速報値の同3.4%増から0.6%ポイント上方修正された。国内の民間最終需要は引き続き緩やかな伸びとなっているものの、純輸出については、輸出が前期比年率7.6%増と07年1-3月期の同1.1%増からプラス幅が拡大した一方で、輸入が同3.2%減と03年1-3月期以来のマイナスとなったことから、前期比年率寄与度1.4%増と実質GDP成長率を押し上げる要因となった。輸出入をそれぞれ寄与度分解すると、4-6月期の輸出の増加は工業原材料がプラスに転じたことや、資本財(民間航空機除く)、サービスが大幅な伸びを示したことによるところが大きいことがわかる(図2-1)。また、輸入の減少は、工業原材料がプラスに転じた中で、原油・石油製品が大幅なマイナスとなったことなどによる(図2-2)。

  2. 名目ベースの貿易収支(対GDP比)をみても、拡大傾向にあった貿易赤字は、06年10-12月期に縮小し、その後はおおむね横ばいで推移している(図3)。また、経常赤字も同様の傾向にある。GDPベースの純輸出はこのところ振れがあるものの、均してみると06年秋以降はプラスに寄与していることから貿易収支の動きとある程度整合的なものとなっている。これまで増加してきたアメリカの貿易赤字、経常赤字が06年に比べて縮小した要因としては、国内の景気減速により内需の伸びが緩やかになっている一方で、ヨーロッパ等の海外経済が堅調に推移していることがあると考えられる。

  3. しかし、アメリカの貿易赤字は依然としてGDP比5%台、経常赤字は同6%前後と高水準にある。今後、景気が力強さを取り戻した場合には、再び赤字が拡大する可能性もあり、中長期的には一層の対外不均衡の拡大が為替相場や市場金利の変動を通じて、成長の抑制要因となるなど、アメリカ経済のリスク要因になることが考えられるため、貯蓄投資バランスの回復等、不均衡是正に向けた取り組みが必要であると考えられる。

  4. ここで国・地域別貿易収支の推移をみると、近年においては、対日及び対NIEsの赤字が縮小する一方で、対OPEC及び対中国の赤字が拡大している。原油・石油製品の輸入を中心とする対OPEC赤字は、名目ベースでは06年10-12月期に縮小したものの、今年に入り再び拡大している(図4)。この背景としては、価格、輸入量における季節性が大きいと考えられる。まず平均輸入価格の推移をみると、春以降価格上昇が続いており(図5)、また、WTI原油先物価格の推移をみると、年半ばにかけて大きく上昇しており、7月31日には終値で1バレル=78.21ドルと史上最高値を更新していることから、平均輸入価格は夏場においてはさらに上昇している可能性が高いと考えられる。しかし、夏のドライブシーズンが終わると秋口以降はガソリン需要が一服し、原油輸入量が減少するとともに、価格も下落する傾向がみられ、本年もすでに先物価格にはそうした動きが現れつつあることから、秋口以降は原油・石油製品輸入額は減少し、対OPEC赤字も縮小する可能性があると思われる。

  5. また、対中貿易赤字はさらにハイペースで増加しており(前掲図4)、07年上半期では赤字額全体の31.5%に達するなど最大のシェアを占めている(図6)。 (参考)日本:10.8%、EU:12.8%、OPEC:14.9% (07年上半期) 対中貿易赤字の拡大は、為替問題や米中双方の貯蓄投資バランス等の構造的要因、両国の産業構造の相互補完性などが背景にあり、今後一段と増加する可能性もあると考えられる。このため、両国間の貿易摩擦を引き起こすおそれもあり、今後の米中戦略経済対話や人民元改革などの動向が注視される。

図1:実質GDP成長率
図2−1:輸出(GDPベース)の寄与度分解 図2−2:輸入(GDPベース)の寄与度分解 図3:貿易収支(国際収支ベース、名目、季調値、対GDP比)・経常収支(対GDP比)の推移
図4:国・地域別貿易収支(通関ベース、名目、原数値)の推移 図5:原油価格の推移 図6:貿易赤字に占める国・地域別割合(通関ベース)の推移

(備考)
米国商務省、IMF、ブルームバーグより作成。

担当:参事官(経済財政分析-海外担当)室

   大塚 昌明  直通:03-3581-9536
   坂井 潤子  直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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