今週の指標No.827 目次   前へ  次へ 2007年8月27日

中国:物価上昇圧力に対する懸念の増大

ポイント

  1.  中国では、消費者物価上昇率が2007年7月に前年比5.6%と、約10年ぶりの高い伸びとなった(図1)。政府は07年の上昇率を3%以内とすることを目標としているが、3月以降3%を超えて推移し、その伸びは高まっている。この押上げ要因となっているのは約3割のウエイトを占める食品価格であり、7月には食品価格は同15.4%となる一方、食品を除く消費者物価は同0.9%と相対的に安定して推移している(図2)。
     
  2.  食品価格の内訳をみると、穀物(同6.0%)、食肉(同45.2%)、卵(同30.6%)等が上昇している(図3)。食品価格の上昇の背景としては、代替エネルギー需要の増大によるトウモロコシ等の国際穀物価格の上昇とそれに伴う飼料コストの上昇等の供給要因のほか、所得増加に伴う需要増も挙げられる。特に、食肉の中でも中国国民が多く消費する豚肉(*1)については、上記要因のほか伝染病の流行もあり、小売価格が同69.7%と高騰しているため、中国政府は豚肉等に対して供給を確保し価格の安定を図るための対策を講じている。

  3.  また中国人民銀行(*2)は、特に国民生活に身近に影響する食品価格と住宅価格(*3)の上昇速度が比較的速いものとなっているとした上で、物価上昇圧力は持続的に増大しているとの見方を示している。その中で、(1)食肉価格が高水準を維持する期間が比較的長くなる可能性等があり、食品価格は短期的に下落が容易ではないこと、(2)エネルギー資源価格の上昇圧力が存在すること、(3)労働コストの上昇がみられること、(4)日常品の食肉や卵の価格上昇によるインフレ期待の高まりがみられること等を挙げ、食品価格の上昇がその他製品へ波及するリスクに注意が必要との懸念を表明し、物価動向を注視してインフレ期待を抑制していくとしている。

  4.  以上のように、これまで低水準で推移していた食品価格の上昇は、市民生活、特に低所得者の生活に影響を及ぼすと考えられる。また経済全体としても、固定資産投資の伸びが07年に入り再び高まるなど景気の過熱感がみられ(図4)、マネーサプライ(M2)も目標の16%を超えて推移し、銀行から企業への貸出残高も高い伸びが続いている(図5)。そのため、マネーサプライや貸出の伸びの抑制及びインフレ期待の安定等を理由に、人民銀行は一層の金融引締めを行っている(図6)。今後、食品価格の上昇がインフレ期待を強め賃金や物価全体へ波及するリスクについては引き続き注視していく必要があろう。

    (*注1)都市部の消費支出の約7%(05年シェア)を占める食肉類のうち、豚肉の消費は約6割、次に鶏肉の消費が約3割と続く(06年シェア)
    (*注2)07年4〜6月期『中国通貨政策執行報告』(8月8日公表)
    (*注3)住宅販売価格は全国で前年比6%前後の上昇を続けており、深セン等の一部の都市では2桁の伸びで推移している都市もみられる


図1:消費者物価上昇率の推移、図2:消費者物価の内訳 図3:品目別食品価格の推移、図4:経済成長率と固定資産投資の伸び 図5:M2と貸出残高の伸び、図6:預金準備率、預貸金基準金利の推移

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 野口 美雪 直通:03-3581-9537

※ 本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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