今週の指標 No.819 目次   前へ  次へ 2007年7月23日

アメリカ:金融政策運営上注視されるコア物価とインフレ・リスクの動向

<ポイント>

  1. アメリカの景気は、住宅建設の減少等により減速している。06年4-6月期以降2%台の成長率が続いた後、6月28日に公表された07年1-3月期の実質成長率(確定値)は、個人消費が堅調なものの住宅投資、純輸出などのマイナス寄与により0.7%と低下した(図1)。物価動向をみると、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレの基準指標としている個人消費支出(PCE)コアデフレーターの上昇率は、5月前年同月比2.0%、6月同1.9%となり2ヶ月連続でFRBが望ましいとするレンジ(1.0%〜2.0%)の上限におさまるなど上昇率が緩やかに低下する動きもみられる(図2)。また、消費者物価指数(CPI)コアの上昇率も5月から2ヶ月連続で前年同月比2.2%とやや落ち着きがみられるが、エネルギーや食料品価格の上昇によりCPI総合の上昇率は、5月から引き続いて同2.7%となった。

  2. こうした中、FRBは、6月27日の連邦公開市場委員会(FOMC)で07年6月以降8回連続で政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)レートの誘導目標水準を5.25%に据え置いている(図2)。FOMC声明や7月18日の下院金融委員会でのFRB議長議会証言で、「インフレ圧力の持続的な鈍化が明確な形で現れていない」と指摘し、FRBは引き続き政策運営上の最大の懸念事項としてインフレを挙げている。

  3. 議会証言では、今後のアメリカ経済の見通しが示され、07年から08年にかけて成長率が緩やかに高まると見込まれている。また、物価については、各種先物価格からはエネルギーや商品価格の伸びが頭打ちになることが示唆されていることや、生産物・労働市場におけるインフレ圧力が緩和していくことにより、インフレ率は徐々に落ちついていくものと見込まれている(表1)。他方でインフレがこうした見通しより上振れるリスクとして、(1)エネルギー価格の急速な上昇がさらに続き、総合物価ひいてはコア物価の上昇を招くリスク、(2)雇用が逼迫するなど資源利用率が高い中で消費や成長が上振れして物価上昇を招くリスクが指摘されている。

  4. 物価統計をみると、このようなリスクを確認することができる。原油価格(WTI先物)は、2月中旬以降60ドル台から65ドル台半ばを推移した後、6月中旬より上昇し6月29日には昨年8月以来10ヶ月ぶりに70ドルを越え、7月18日には75ドルに達した。今後、夏場のドライブシーズンにおけるガソリン需要、地政学リスクやOPEC減産等からさらに上昇する可能性がある。国際的な商品市況をみると、生産者物価指数(PPI)の先行指数といわれ工業原材料で構成されているJOC−ECRI工業価格指数は、07年2月より5ヶ月連続で上昇している(図3)。PPIの中間財・原材料コアの3ヶ月前比年率をみても、07年2月よりともに5ヶ月連続の上昇となっており、原材料コアの伸びは沈静化してきているものの、中間財コアでは上昇率が高まる傾向にある(図4)。また、雇用情勢をみると、失業率が4.5%前後で推移する一方、単位時間あたり賃金もこの1年間、前年比4%程度で推移しており、サービス業を中心に雇用逼迫感が続いている(図5)。

  5. これまでのところ金融政策の指標となるコアインフレ率はやや落ち着きがみられるが、このように川上である原油価格や商品価格、PPI(中間財・原材料コア)及び賃金コストには、様々なインフレのリスク要因が考えられるところであり、今後の物価動向及び金融政策運営が注視される。


図1 実質GDP成長率 図2 FFレートと物価指標 図3 原油価格とJOC−ECRI工業価格指数の推移
図4 PPI(中間財・原材料コア) 図5 時間当たり賃金(前年比)と失業率 表1 FRBのアメリカ経済見通し
(備考)
(出所)米国商務省、財務省、労働省、FRB、ブルームバーグより作成。

担当:参事官(海外担当)付 丸山 一郎 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次   前へ  次へ