今週の指標 No.818 目次   前へ   次へ 2007年7月23日

企業の資金調達の動向

<ポイント>

  1. 企業部門と家計部門の資金過不足の状況をみると、1998年度以降、債務圧縮の動き等を背景に、企業部門は資金余剰主体となっていたが、2004年度をピークに企業の資金余剰幅は減少し、2006年度には家計部門の資金余剰幅を下回った(図1)。
  2. 企業部門の資金過不足を要因分解すると、1990年代半ば以降、借入返済要因が企業の資金余剰幅を押し上げてきたが、2003年度をピークにその押し上げ幅は低下し、2006年度には、わずかながらネット借入増に転じた(図2)。企業の負債圧縮の動き等を背景とした借入の減少が一服してきたといえる。今後、企業部門が資金不足主体となるかどうかは、借入等による企業の資金調達の今後の動向にかかっている。
  3. 銀行貸出統計から企業の資金調達の動向を見ると、1990年代後半以降、企業向け貸出は減少を続けていた。2004年以降、その減少幅は縮小し、2006年には中小企業向け貸出がプラスに転じた(図3)。
  4. 2007年に入ってからは、貸出は、大中堅企業向け、中小企業向け共に、やや伸び悩んでいる(図3)。このような貸出の伸び悩みには、企業の資金調達動向の変化も影響している。
  5. 企業の資金調達の動向には、借入を押し下げる動きがみられる。近年、コミットメントラインの利用が進み、流動性を確保しつつ、従来の証書貸付に頼っていた部分の運転資金の借入を節約する流れがみられる(図4)。また、シンジケートローンの拡大に伴い、コミットメントライン形態のシンジケートローンの組成額も増加してきている(図5)。
  6. このように、企業の資金余剰幅が低下した背景として、借入等による企業の資金調達が回復していることが挙げられる。一方、企業の資金調達をめぐる最近の環境については、貸出の伸び悩みや、借入の押し下げがみられ、今後、企業部門が再び資金不足主体となっていくかどうか注視する必要がある。

図1.企業部門及び家計部門の資金過不足
図2.企業部門の資金過不足の要因分解
図3.銀行貸出の動向
図4.コミットメントライン利用額の推移
図5.シンジケートローン組成額の推移

(備考)
(注)コミットメントラインとは、借り手企業と銀行とが予め合意した期間・融資限度額の範囲内で、借り手企業の要請に基づき、銀行が金銭を貸し付けることを法的にコミットする契約で、借り手企業は、この融資枠の範囲内であれば、契約期間中、契約内容に従い、いつでも金融機関から借入を行うことが出来る。
(注)シンジケートローンとは、複数の金融機関が協調してシンジケート団を組成し、同一の融資契約書に基づき、同一の条件で融資を行う信用供与の方法である。長期資金の提供のみならず、コミットメントラインのような短期融資枠の設定にも利用される。金利等の条件が市場原理に基づいて決定されることや、事後的な債券売買が容易であること等の特徴を有する。
1.図1、図2は、日本銀行「資金循環統計」により作成。
2.図3は、日本銀行「貸出先別貸出動向」により作成。
3.図4は、日本銀行「コミットメントライン契約額、利用額」により作成。
4.図5は、日本銀行「貸出債権市場取引動向」により作成。
5.(注)は、日本銀行資料、内閣府資料等による。

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付

   品川 陽子  直通:03-3581-5854

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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