今週の指標 No.816 目次   前へ  次へ 2007年7月9日

中国:拡大を続ける貿易黒字と輸出抑制策

<ポイント>

  1. 中国の貿易黒字は急速に拡大している。2007年1〜5月期の貿易黒字は06年通年(1,775億ドル、GDP比6.8%)のおよそ半分に迫る857億ドル(前年同期比84%増)となった(図1)。輸入は前年比20%前後で増加しているものの、輸出の伸びが同20%台後半に達し、貿易黒字が拡大している。輸出品目の内訳をみると、電気・電子機器や一般機械、鉄・非鉄金属の輸出増が輸出の伸びに大きく寄与していることがわかる(図2)

  2. 政府は急増する輸出を抑制するため、輸出品目の37%にあたる2,831品目について、品目別に設定される輸出増値税還付率(*1)の引下げや還付自体の取止めを行う大規模な抑制策(*2)を6月19日に公表し、7月1日より実施している(表1)。こうした増値税還付の調整により、貿易黒字の削減や貿易摩擦の緩和を図るとともに、生産にあたり高エネルギー消費・高環境汚染を伴う製品や低付加価値製品等の輸出抑制を図るとしている。

  3. このほか、政府は、品目別に設定される輸出関税の賦課やその税率の引上げ、加工貿易禁止類商品目録への追加(*3)等、従来行ってきた各種輸出優遇措置を撤廃若しくは削減している。これらの輸出抑制策は07年に入り強化され、産業別では特に鉄鋼業に対し、積極的な抑制策がとられている(表2)。この背景としては、生産効率の低い小規模企業を中心とした投資や生産の過剰が指摘されるなか、安価な鋼材が欧米諸国との貿易摩擦の一因となっていること、また、鉄鋼業のエネルギー消費量が中国全体の15%、汚染物質の排出量は全体の14%を占める(*4)など、エネルギーの大量消費や環境汚染につながっていることなどが挙げられる。

  4. これらの価格面を中心とした輸出抑制策が今後の貿易黒字の縮小につながるかどうか、注視していく必要がある。また、政府は持続的な経済成長を達成するため、高エネルギー消費、高環境汚染業種の投資や生産を抑制するとともに、非効率な企業の淘汰、統合等による産業の高度化を目指している。関連した品目に輸出抑制の焦点を当てることにより、今後、貿易構造や産業構造の変化にどの程度効果を持つのか、見極めていく必要があろう。

    (*1)中国では国内販売や輸出に17%の増値税(一種の付加価値税)が課されるが、輸出奨励のため、輸出品の増値税は一定割合が還付される
    (*2)「一部品目の輸出増値税還付率引下げに関する通達」(財税[2007]90号)
    (*3)加工貿易(海外より原材料等を輸入し、完成品を再輸出する方式)については、優遇措置として保税扱いでの輸出入が認められているが、当該目録に記載された品目については、これが認められなくなる。一般貿易としての輸出入は可能であるが、輸入時の関税と増値税を支払う必要があるため、実質的には増税となる
    (*4)国家発展改革委員会の報告書(07年5月公表)による

図1:貿易黒字及び輸出入の伸びの推移
図2:輸出の動向と品目別寄与度 表1:6月19日発表の輸出抑制策の概要 表2:07年に入り発表された鉄鋼業関係の貿易関連政策
(備考)
中国海関総署、CEICデータ等より作成

担当:参事官(経済財政分析-海外担当)室

   野口 美雪  直通:03-3581-9537
   笹川 朋子  直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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