今週の指標 No.801 目次   前へ   次へ 2007年5月7日

IT利用産業(サービス産業)における労働生産性の日米英比較
〜IT資本深化が与える影響についての一考察〜

<ポイント>

  1. 人口減少下において我が国が持続的な成長を維持するためには、生産性の向上が重要である。生産性向上のための手段としてITの有効活用が挙げられる。我が国においては、ITセクターは生産性が伸びているものの、IT利用セクターにおいては、生産性の伸びが大きく落ち込んでいるとの指摘がある(注1)。本稿では、労働生産性の水準及びIT活用と労働生産性の関係についてIT利用側の産業(サービス産業)を中心に日米英比較を行う。
    (注1)Jorgenson and Motohashi(2005)“Information Technology and the Japanese Economy”を参照。

  2. まず、労働生産性の水準につき、主要な非製造業について業種別に日米英の比較を行う(第1−1〜2図)。その結果、アメリカとの比較では、「電気・ガス」を除く全ての業種において我が国の生産性の水準が低く、特にIT利用産業の内、我が国の就業者数の約4割を占める「卸・小売」、「運輸等」、「飲食・宿泊」、「ビジネスサービス」の四業種において、その差は2000年代以降拡大している。英国との比較においても、アメリカほど差はないものの、同様の結果となった。このように、我が国のIT利用産業の生産性の水準は概ね低く、このIT利用産業の生産性向上が、我が国全体の生産性向上にとって重要であることが確認できる。

  3. 次に、IT利用産業の内、2000年代以降、労働生産性の水準において米英との差が広がっている「卸・小売」、「運輸等」、「飲食・宿泊」、「ビジネスサービス」の四業種について、労働生産性上昇率の要因分解の日米英比較を行う(第2−1〜5図)。その結果、我が国のIT資本深化の寄与は上記四業種全てにおいて米英と比較して小さく、労働生産性上昇率の押し上げ効果が限定的なものとなっていることが分かる。また、アメリカは、2000年代に入って労働生産性上昇率が更に高まっているが、これは、90年代がIT資本深化によるものであったのに対し、2000年代以降は、急激に上昇した全要素生産性が大きな要因となっており(注2)、英国の「卸・小売」においても同様の傾向が見られる。全要素生産性には計測上、様々な要因が含まれる点に留意が必要であるものの、アメリカの2000年代の全要素生産性の高い伸びは、IT活用に伴う組織改革や知識資本など無形資産の蓄積が要因であるとの指摘がなされている(注3)。
    (注2)アメリカの「ビジネスサービス」においては、全要素生産性の押し下げ効果が縮小。
    (注3)米議会予算局(2007)“Labor Productivity : Developments Since 1995”を参照。

  4. 以上のように、生産性を向上させ、持続的な成長を可能にするためには、ITの有効活用が一つの手段であるものの、我が国は米英と比較すれば、IT利用側の産業(サービス産業)における労働生産性上昇率へのIT資本深化の寄与は限定的といえる。

第1−1図 主要な非製造業の業種別労働生産性水準の比較(日米比較)、第1−2図 主要な非製造業の業種別労働生産性水準の比較(日英比較)
第2−1図 労働生産性上昇率の要因分解(産業計)、第2−2図 労働生産性上昇率の要因分解(卸・小売)、第2−3図 労働生産性上昇率の要因分解(運輸等)、第2−4図 労働生産性上昇率の要因分解(飲食・宿泊)
備考

担当:参事官(経済財政分析−総括担当)付 寺西 航佑 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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