今週の指標No.800 目次   前へ  次へ 2007年4月23日

中国:一層の金融引締めの背景

ポイント

  1.  中国では、2007年に入り、金融引締め策を強めている。中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率を3回引き上げ、3月17日には貸出基準金利等を引き上げた(図1)。人民銀行の声明によると、マネーサプライ及び貸出(*注1)等の伸びを抑制するためとされており、それらの動向をみると、06年後半に鈍化していたものの、07年に入って伸びが加速していたことが分かる(図2)。
     
  2.  マネーサプライの伸び等にみられるように、中国では過剰流動性が大きな問題となっている。過剰流動性が高まる背景には、「介入による人民元の安定→貿易黒字の拡大→外貨準備の増加→過剰流動性の助長」というサイクルがあると考えられる。貿易動向をみると、輸出の伸びが輸入の伸びを上回る傾向にあり、貿易黒字は大幅に拡大し外貨準備も積み上がっている(図3)。さらなる人民元高への圧力が高まる中、人民元レートはこのところやや元高傾向で推移しているものの、05年7月の切上げ前の水準から約7%の元高にとどまっている。そのため過剰流動性の問題はより顕在化しており、06年後半にやや緩やかになっていた固定資産投資の伸びがこのところ加速し、実質GDP成長率でみても加速するなど、景気再過熱の懸念が生じている(図4)。また、金融面では過剰流動性の増加により株式市場に資金が流入し、06年後半以降の急激な株高を生じさせている一因とも考えられている。

  3.  07年3月に開催された全国人民代表大会(*注2)等では、引き続き「穏健な(*注3)」金融政策を実施するとし、人民元については基本的安定を維持しながら柔軟性を拡充する方針とともに、貸出の伸びを適切な水準に管理し固定資産投資を抑制することや、対外不均衡の是正に取り組むことが表明された。したがって、当面も引き続き利上げを含めた金融引締め策が継続されると考えられるが、マンデルの「開放経済下のトリレンマ」に即していえば、(1)海外との自由な資本移動、(2)為替相場の安定、(3)金融政策の独立性の3つの目標のうち完全に両立し得るのは最大2つまでであるため、海外との資本移動が進展する中で人民銀行の金融政策は難しい局面が続くといえよう。また人民元の柔軟性の拡充や資源配分の効率化等に向けては、金融機関の競争力強化や金融市場の整備等の中長期的な課題に対処していくことも重要であろう。

    (*注1)貸出の伸びとは、銀行から企業への人民元建貸出残高の伸び。
    (*注2)日本の国会に相当。年1回開催。
    (*注3)中文では「穏健的」であり、中国政府の公式文書の英語版では「prudent」と英訳されている。経済情勢に応じて適切に引締めや緩和をし安定成長を目指す意味で、和文では「安定的」が近い表現と考えられる。


図1:政策金利の推移、図2:M2と貸出残高の伸び 図3:貿易収支と外貨準備高、図4:経済成長率と投資の伸び 備考

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 野口 美雪 直通:03-3581-9537

※ 本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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