今週の指標 No.798 目次  前へ   次へ 2007年4月9日

EU:求められるサービス貿易の活性化を通じた統合の深化

<ポイント>

  1. 欧州では、1993年の単一市場の始動から十余年を経た現在、域内外における更なる財・サービス取引の拡大、とりわけサービスセクターにおいて更なる市場統合を進め、規制緩和等によって競争を促進し、市場を活性化することが必要であると言われている。
  2. 単一市場が十全に機能するために、これまでも域内の様々な障壁の撤廃が図られてきたが、特にサービス市場においては、依然として各国制度の差異等により、企業の国境を越えた事業展開が困難であることも多いと言われている。実際に欧州の財・サービス取引の規模を域内外で比較すると、(単純に財の貿易と同水準が望ましいというわけではないものの)財の貿易に比べ、サービス貿易は域 内外ともに規模が小さく、特に域内のサービス貿易については、雇用者数や域GDPに占めるサービス業の割合を考えれば、その規模はまだ小さく、更なる拡大の余地があると考えられる(図1)。なぜサービス貿易が十分に拡大していないのであろうか。
  3. 背景としては様々な要因が考えられるが、欧州委員会が理由として挙げているものの一つに規制障壁がある。そこで、OECDの規制指標を用いて欧米主要国における非製造業の規制環境を比較すると、英国、ドイツに比べるとイタリア、フランスなどで規制が強い(例えば、イタリア、フランスでは航空業界への参入障壁が高かったり、ガス市場の垂直統合の度合いが強いとされている)とされている(図2)。
  4. 次に、欧州委員会統計局によるサービス市場の世界経済に対する統合度指標で、欧州主要国の動向をみると、図2で規制が強いとされたイタリア、フランスなどで低くなっている(図3)。
  5. 以上を踏まえ、EU KLEMSデータベース(欧州委員会出資のプロジェクトによって作成された成長率や生産性等に関するデータベース)を用いて主要国のサービス業における労働生産性の伸びを比較すると、規制の弱いアメリカや英国では、90年代以降生産性上昇率が向上している。一方で、規制が強く市場の統合度が低いとされる国では伸び悩んでいることがわかる(図4)。  
  6. 欧州では2006年12月にかねてからの懸案であったサービス指令(*)が発効している。当初案には他国で生じる行政手続きや経費を削減することを目指す「母国法主義(**)」が盛り込まれていたが、これが批判の結果削除されるなど多くの修正が加えられている。今後、EU加盟各国が同指令の内容を国内法に取り込むことなどにより、サービス市場がどの程度活性化していくのか、その動向が注目される。

    (*) EUを世界一競争力のある地域とするため、サービス提供の自由に関する法的・行政的障害を除去し、EU域内市場のサービス自由化を達成することを目的とするもの。2006年12月に採択・発効し、各国は09年12月までに国内法にその内容を取り込むことになっている。
    (**)サービス提供者の母国の法令等の要件さえ満たしていれば、他の加盟国でもサービスを提供できるとする原則(サービス受け入れ国の法令等の要件を満たす必要はない。)サービス提供者の母国の法令等のみを遵守していれば良いということでは、サービスの受け入れ国の労働基準を下回る低賃金や劣悪な労働条件が認められ、ソーシャル・ダンピングの容認に繋がるとの批判がなされていた。

図1:EUの域内外との財・サービス貿易の規模 図2:主要国における非製造業の規制指標 図3:サービス市場の統合度(主要国の動向) 図4:サービス業の生産性の伸び(時間当たり)
(備考)
1.欧州委員会、欧州委員会統計局(EUROSTAT)、OECD、EU KLEMSデータベースより作成。
2.図2の規制指標は、OECDのREGREF(Regulatory Reform)指標と呼ばれるもので、7つの主要な非製造業(航空、通信、電力、ガス、郵便、鉄道、陸運)について参入障壁、公的所有、市場構造、垂直統合などの項目を基に指数化したもの。数値が高いほど規制が強いとされている。
3.図3の統合度指標は、国際収支統計におけるサービス貿易の輸出入合計/2のGDP比をEUROSTATが算出したもの。数値が高いほど、当該地域の世界経済における統合度が高いとされている。
4.図4のサービス業はEU KLEMSデータベースにおいて「市場サービス」とされている項目で、流通、金融・対個人サービス(ホテル・飲食、社会・コミュニティサービスなど)で構成される。

担当:参事官(経済財政分析-海外担当)室

   鈴木 一成  直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

目次  前へ   次へ