今週の指標 No.791 目次  前へ  次へ 2007年2月26日

ドイツ:個人消費の動向を占う上で注目される賃金交渉

<ポイント>

  1. ドイツでは企業部門中心に景気が回復している。2006年の経済成長率は2.7%となり、2000年以来の高成長となった。しかし、生産や設備投資、輸出が増加する一方で、個人消費については、暦年ベースでみても02-05年までGDPベースでほぼ横ばいが続いた後、06年に入ってからは、ワールドカップ開催や07年1月からの付加価値税率引上げ前の駆け込み需要といった追い風があったものの、基調としては緩やかな伸びにとどまっている(図表1)。
  2. 個人消費の伸びが緩やかなものとなっている背景は、雇用者所得の伸び悩みと考えられる(図表2)。社会保険料等を含む1人あたりの名目賃金は、04年半ば以降ほぼ横ばいないし低い伸びにとどまっている。1人あたりの名目賃金が伸び悩む背景は、企業が新興国とのコスト競争上、引き続き賃金に対して抑制的な姿勢を堅持しているという対外的な部分と、短時間労働者の増加や人材派遣業の拡大などの労働市場の流動化という国内的な部分が挙げられる。この結果、労働分配率は低下傾向にあり、一方、営業余剰は大きく伸びている(図表3)。
  3. 長期的には、東西ドイツ統合や通貨統合を契機として、国際競争力強化のため、企業は「高コスト体質」の改善を進めてきた。実際、単位労働コストは90年代半ばから横ばいのままであり、04年以降はマイナスとなっている(図表4)。この結果、ドイツ企業は競争上の優位性を確保し、06年もドイツが世界最大の輸出国の座を維持し、貿易黒字が過去最高を更新している。
  4. こうした状況の中で、企業部門から家計部門への所得分配が進んでいないとの指摘もあり、ドイツ最大の労働組合IGメタルも06年以上の賃上げ要求を行う見通しである(図表5)。一方、独大企業の半数以上の経営者は、07年の賃金交渉で3%までの賃上げに応じる意思があると経済誌の調査に回答しているものの、労働組合の要求との乖離は依然として大きい。今後の個人消費の動向を占う上で賃金交渉の行方が注目されている。

図表1 実質GDP
図表2 雇用者所得
図表3 労働分配率
図表4 単位労働コスト
図表5 IGメタルの賃金交渉

(備考) ドイツ連銀、ドイツ連邦統計庁、EUROSTATなど。

担当:参事官(経済財政分析−海外担当)付 山本 知範 直通:03-3581-0056

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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