今週の指標 No.777 目次   前へ   次へ 2006年12月25日

急上昇する電気機器の輸出価格指数

<ポイント>

  1.  9-10月の電気機器輸出の動きは、通関金額が緩やかな増加基調を続けているのに対し、数量指数は減少しており乖離が見られる(図1)。数量指数は「金額指数÷価格指数」により算出されるものであるが、この2ヶ月、電気機器の輸出価格指数は半導体等電子部品や音響・映像機器の部分品を中心に急な伸びを示しており(図2)、これが金額と数量の乖離の要因となっている。
  2.  輸出価格指数が変動する要因は多々存在するが、需給以外の要因では、主に以下の3つが挙げられる。
    1. 為替変動によるもの:
      日本の輸出は外貨建てが主体である為、実質実効為替レートと輸出価格指数は強い相関性を持って動く(図3)。中長期的には為替変動は外貨建て輸出価格に反映されると考えられるが、短期的には円安は円建て表示である輸出価格指数を直接押し上げる要因となる。
    2. 素材等の市況価格変動によるもの:
      鉄鋼や石油化学製品など素材系品目については原材料(鉄鉱石や原油)価格の騰落が、輸出価格指数の上昇/下落を引き起こす。
    3. 同一輸出統計品目内での、高価格製品へのシフト
      貿易統計において同じ品目としてカウントされる製品につき、高価格製品へのシフトが発生(例:液晶パネルにつき、より大きなサイズが主体となる)した場合、当該統計品目の平均価格は上昇する。
    それでは9-10月の価格指数の動きは、どのように説明し得るのであろうか。
  3.  まず為替要因であるが、電気機器輸出の外貨建て比率は輸出全体のそれとほぼ同じであり(表1)、輸出全体の価格指数を上回る急激な伸びについて、この要因だけでは十分に説明できない。
     また、電気機器のような加工系品目については、原材料価格の変動を製品価格に転嫁する動きが素材系品目よりは弱いと考えられる為、市況要因が主とも考えにくい。事実、半導体や電子部品における代表的な品目の市場価格の推移を見ると、この9-10月の輸出価格高騰に繋がる動きは見られない(図4)。
     これらを勘案すると、電気機器の価格指数の急激な上昇は、高価格製品へのシフトが主因になっていると類推される。例えば、MPU(注)や、テープレコーダー/ビデオレコーダー等の部分品の輸出単価は急騰しており、これらの統計品目内で高価格品へのシフトが進んでいると推測される(図5)。
    注:マイクロプロセッサ;コンピュータや家電等において基本的な演算処理を行う半導体チップ
  4.  但し、この価格指数上昇は“統計のクセ”で若干過大に出ている点には留意が必要である。貿易統計の指数は、ラスパイレス/パーシェ両指数の幾何平均であるフィッシャー指数を採用しているが、構成要素たる両指数の動きを見ると、ラスパイレス指数のみが急激に上昇していることが分かる(図6)。これは価格上昇が進んでいる品目は、直近の輸出においてはシェアが低いことを示唆している。例えば先述のテープレコーダー/ビデオレコーダー等の部分品は、2000年の通関金額全体に占める割合は0.34%であったが、2006年(第I〜III四半期)では0.12%と約1/3にシェアは減少している。
     従って、9-10月の電気機器の輸出実勢を判断する上では、数量指数の減少について、価格面でのこうした動きがバイアスを与えている可能性がある点について注意が必要である。

図1.電気機器の輸出金額及び数量指数 図2.輸出価格指数の動き
図3.輸出価格指数と実質実効為替レート 表1.輸出における契約通貨別構成比
図4.電子部品・デバイスの市況価格 図5.MPU等の輸出単価の動き
図6.パーシェ/ラスパイレス両指数の推移

(備考)
  1. 財務省「貿易統計」、日本銀行「輸出入物価指数の契約通貨別構成比(2006年2月)」「実効為替レート」、日経NEEDS商品市況データより作成。
  2. 図1は内閣府季節調整値。図2・5は原数値。
  3. 表1は日本銀行が輸出物価指数を算定する際の対象品目に関する調査結果であり、実際の輸出全体における契約通貨別比率とは必ずしも一致しない点には留意を要する。
  4. 図4の価格は特約店卸、大口需要家渡しの週次価格の月間平均値。
  5. 図6のパーシェ価格指数/ラスパイレス価格指数は、2006年1月の値を100に換算して表記。
    尚、ラスパイレス指数は計測時点でシェアが減少している品目を過大評価する特性がある為、パーシェ指数が安定的な中でのラスパイレス指数の上昇は、直近の輸出シェアが低い品目の価格上昇を示唆している。

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付 新屋 吉昭 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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